●『Merry Christmas…♪』
ドキドキ……。 クリスマスイルミネーション賑わう街の中、雛姫は恋人を待っていた。 メールで呼び出した時もそうだったが、彼を待つこの時も彼女の心臓は早鐘のように鳴り響いている。 それを抑えるように彼へのプレゼントが入った袋を抱きしめ……。 「ごめん、待たせたかな?」 「――!?」 と、同時に恋人である飛鳥がやって来た。 「う、ううん。い、今来た所だから……」 心の準備が整っていない所にいきなりの不意打ち。心臓がより一層高鳴ったが何とか抑え、彼にプレゼントを渡す。 中身は大きめの虎のぬいぐるみ……そのぬいぐるみは彼女の頬同様、赤かった。
その後、二人はしばらく街の中を歩いた。 ただ歩き回るだけだったが、恋する二人にとってはそれだけでも十分幸せな時間であっただろう。 ……気付けば、街を見渡せる丘の上まで辿り着いていた。 「あ、あの、飛鳥…くん」 雛姫は飛鳥の服の袖を引っ張り、小さな声で彼を呼ぶ。 「ん、なんだい?」 何か大事な話でもあるのかな……と飛鳥は屈み、目線を彼女に合わせ――。 「――!?」 ……雛姫は彼にそっとキスをした。 同時に、世界は白い輝きで満たされる。 まるで月明かりに煌く雪の精霊が彼女達を祝福するかのように。 そして、ゆっくりと顔を離し……。 「……Merry Christmas」 雛森はそっと、そう告げた。
街へ戻る道中、先程の事を思い出しては真っ赤になる雛姫。 飛鳥の方もいきなりの事だったので少しドキマキしており、二人とも終始無言のまま歩いていた。 ……しかし二人の手は決して離れぬよう、しっかりと握られている。 『言葉は無くとも、互いの気持ちに偽りは無い』――そう、誇示するかの様に。 やがて街明かりが見えてきた。 ようやく落ち着いたのか、雛姫は彼の方を振り向いて 「大好き、だから……。ずっと……一緒、よ……?」 と、想いを伝える。 「ああ、もちろん!」 飛鳥は、笑顔でそれに答えた。 メリークリスマス! 何時までも二人の愛が続きますように……。
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