●『最初のクリスマス〜ここから〜』
夜の温室。人気が無く、ただ月の光が照らすその場所に……二人は、訪れた。 二人で過ごす、初めてのクリスマス。彼らは互いに緊張している様子だった。 「えっと……フレステア。今日は、一緒に出かけてくれてありがとな」 「あ……その……私も、眞也さんと過ごせて嬉しかったですわ……」 薄暗い場所に二人きりという状況。上手く会話が続かない。 「……それにしても、ここ、寒いな。フレステアは、大丈夫か?」 「あ、はい。大丈夫ですわ。あ……私、眞也さんのためにクリスマスプレゼントを用意していて……。寒いのなら、ちょうどいいと思いますわ」 フレステアは意を決したように、クリスマスプレゼントとして用意していたものの、緊張のあまり渡せなかった『ある物』を取り出した。 「あ、あの……慎也さん……。私……これ、自分で編みましたの。受け取っていただけますか……?」 フレステアが取り出したのは、手編みのマフラー。それを、右手でで眞也に押し付けるように渡す。フレステアは、左手を胸の辺りで握り締め、真っ赤な顔で俯いていた。 「えっ……? 俺のために……わざわざ……?」 手渡されたマフラーに、眞也は驚き、マフラーとフレステアを交互に見て……そっと、フレステアを抱きしめた。その行動に驚き、顔を上げたフレステアの顔を見て、眞也は優しく微笑む。 「最高のクリスマスプレゼントだ。ありがとな」 囁き、唇に口付ける。フレステアは驚きのあまりに固まってしまっていたが……しばらくして、顔を眞也の胸の辺りに押し付け、そっと手を眞也の背に回して、呟いた。 「私も……最高のクリスマスプレゼントを、いただきましたわ。眞也さんの笑顔と……幸せな時間を……」 「……フレステア……」 眞也は、抱きしめる力を強くする。 「俺も、幸せだ。こうして、フレステアとクリスマスを過ごせたんだからな」 「……眞也さん……」 二人は見つめあい、二度目のキスをして……笑いあう。 「こうしてると、温かいな」 「そうですわね。眞也さんがいてくれれば、寒くないですわ」 「フレステアさえいてくれれば……マフラーもいらないよな」 「えっと……できれば、マフラーも使ってくださいね? 眞也さんのために、一生懸命編んだものなので……」
二人は、暫くの間抱き合ったままで幸せそうにしていた。 そして……抱き合う二人を、温室を照らす月だけが見ていた……。
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