●『一緒に作るクリスマスケーキ』
朝、玲音は撫子の家で行われるパーティの為に朝からケーキを作っていた。 折角だからいつもは作らないような少し手間のかかるケーキをと、朝から時間をかけて作っていく玲音。 後は飾り付けというところで訪問を告げるチャイムが鳴る。エプロン姿のまま扉を開けると、撫子が立っていた。 「お手伝いしますの」 撫子はケーキ作りの手伝いに来たのだという。勿論玲音に断る理由もなく、撫子をキッチンへ連れて行く。 「ここをもう少し傾けて……」 「こうですの?」 「そうだな、うん、ありがとう。良い感じだ」 デコレーションしながら、玲音は撫子にアドバイスも出していく。 それを聞きながら、撫子もデコレーションを進める。二人の手元が動くたび、ケーキは次第に完成へと近づいていく。 「おうちの飾りつけも頑張りましたのよ」 撫子は、パーティに向けて準備した自宅の様子も話題に上らせる。きっと、パーティが楽しみだからこそなのだろう。 「そうか、それは楽しみだな。それに見合うケーキになっているといいのだが」 それを微笑んで返す玲音。その表情は何処か心配の色が見えていたが、 「大丈夫ですの!」 その気配を感じ取り、撫子は玲音の顔を見て力強く言う。 「玲音さんのケーキはパーティに十分見合いますの!」 そう言い放つ撫子に玲音は一瞬驚くも、すぐにいつもの表情に戻り、 「そうだな、撫子も手伝ってくれているからな」 と、撫子の頭をぽふぽふと撫でた。 撫でられた撫子は嬉しい気持ち半分、恥ずかしい気持ち半分といった感じの反応を見せる。少し前までは、こんな事があると率直に喜んでいたものだが、そろそろ、そうはいかないお年頃のようだ。 少し照れつつも飾り付けに戻った撫子は、デコレーションの最後として、ケーキにチョコレートのプレートを乗せる。 これでケーキは完成だ。 「……一人でやるより可愛らしく出来上がったと思う」 玲音が出来上がったケーキを見て言う。可愛らしく出来上がったのは撫子のお陰かもしれない。そう思い隣に立つ撫子に目を向ける。 「美味しそうですの」 手伝った撫子はとても幸せそうに顔をほころばせながらそう返す。
二人はケーキの形を崩さないよう注意しながら、そっと箱に入れる。 「行きましょう玲音さん」 外出の準備を済ませた撫子が嬉しそうに声を弾ませる。 「ああ」 頷き、玄関のドアを開けた玲音は撫子の手を取る。手を繋いだ二人は一緒に、パーティ会場である撫子の家へと向かうのだった。 今年のクリスマスパーティはきっと楽しい時間になるだろう。二人は、どことなくそう感じていた。
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