●『主人とメイドのこすぷれ劇場〜聖夜(南半球)編〜』
結社主催のクリスマスパーティ。 メインイベントはサンタクロースが配るプレゼント! ……の、はずなのだが……。 「ご、ご主人様……私も、やっぱり出ないとダメでしょうか……」 用意されたサンタクロースの衣装に着替えを済ませたものの、恥ずかしそうにもじもじと身をよじり、どうしても決心がつかない様子で言うのは、団長専属メイドの零。 「何を今更! 私だって恥ずかしいんだから……」 零を叱咤するのは団長の狭霧。やる気はあるものの、言葉にした通りにその表情は十分に恥ずかしそうである。 それもそのはず。二人が身につけているのはシンプルな赤地に白のふわっふわの縁取りの、色彩こそサンタクロースらしい……ビキニ。 どこからどう見ても、ビキニ。 サンタビキニとでも形容すれば分かりやすいだろうか。 各所にリボンやポンポンがあしらわれ、なかなかに可愛らしいデザインなのだが……そうは言ってもビキニはビキニ。露出度はハンパない。いっそサンタでなく、ただのビキニだったら……とか、最初の趣旨から外れることを考えてしまったりもする。 サンタ+ビキニが、まさかこんなにも恥ずかしいとは。 特に普段からメイド服しか着ていない零に、いきなりのこの露出度は耐えがたいものがあるようだ。恥ずかしくてどうしようもない、のだが。 「大体、この服装を最初に言い出したのは零でしょーがっ」 なら、仕方ない。 「ご主人様が着るだけだと思ったんですよ〜」 「私だけにこんな恥ずかしい格好させようったって、そうは問屋が卸さないわよ!」 狭霧だって恥ずかしくて溜まらないのだ。思わず、半ばヤケになって言い放つ。 「ほら、いつまでも恥ずかしがってないで、とっととプレゼント配って早く終わらせましょ」 「ご主人様のいけず〜……」 プレゼントの詰まった袋をよいしょ、と担ぎ上げると、狭霧はすたすたと会場に向かってしまう。その後ろを慌てて付いていく零。
二人が会場に現れると、楽しそうな、大きな歓声が上がる。 クリスマスパーティが大いに盛り上がったのは、言うまでもないだろう。
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