●『いつもと変わらない一日、でも特別な一日』
窓の外ではしんしんと雪が降っている。天気予報によれば、今夜はこのままずっと降り続けるらしい。 暖房のきいた部屋で、晶はのんびりとこたつに入っていた。膝の上にはいつものようにゆうがいる。いつもと同じで、でもちょっとだけ特別なクリスマスの夜。 (「そういえば、初めて会った時もこうしてたっけ……」) その時のことを思い出し、晶はくすっと笑った。 (「あれから一年と二ヶ月。そして、お付き合いしだしてからもうすぐ一年……本当に、あっという間……」) 「はい、ゆうちゃん」 「あーん」 膝の上のゆうが口を開けた。晶はケーキを一口すくい、大きく開いた口の中に入れてあげる。ゆうはそれを嬉しそうにもぐもぐと食べる。 「おいしい〜」 テーブルの上には大きな苺のケーキ。ゆうは晶の膝の上で、晶が口に運んでくれるそれを幸せそうにぱくついている。甘いものが苦手な晶も、その嬉しそうな顔を見ているだけで十分に幸せ。 ゆうの横顔を見下ろしながら、晶はふと気がついた。 (「ゆうちゃん、背が伸びた……?」) ゆうの顔が以前より近い。嬉しさを感じる一方で、どこか胸がきゅっと締め付けられる。 (「これからどんどん伸びて、いつか追い越されちゃうんだね……すごく嬉しくて楽しみだけど、でもほんのちょっと切ないのはどうしてなのかな……」) 「きーちゃん」 考えに沈んで手が止まってしまったせいか。いつの間にか、ゆうが晶を見上げていた。 「な、なぁに?」 「何、考えてるの?」 大きな目に見つめられて、晶はどきっとした。 「な、なんでもないよ?」 晶の動揺を見透かすように、ゆうはさらにじっと晶の顔を見つめる。晶は頬が赤くなっていくのを感じた。思わず目を反らすと、ゆうは無理やり目線を合わせるように回り込んでくる。 「……ゴメンナサイ。なんでも無くはナイデス……」 白旗を揚げた晶に、ゆうはにっこり笑った。 「きーちゃん、お顔が赤いの。だいじょーぶなの?」 「……うん」 更に間近から晶の顔を覗き込むゆう。 「ん?」 「……もうっ。大丈夫だってばっ!」 晶は、赤くなった頬を隠すようにそっぽを向いた。ゆうは晶の体に、甘えるように身をすりよせる。 (「ゆうちゃんと、もっとたくさん思い出作りたいな……これから先も、こんな風に、ずっと」) サンタクロースに願ったら、そんなプレゼントをくれるかな? 甘い甘いクリームの香りが、二人を包んでいた。
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