写楽・遊貴 & 暁・黒龍

●『Twinkle Night』

 クリスマスイブの夜、2人の初デートが待ち遠しくて、何日も前からどきどきしていた黒龍は、遊貴と並んで歩くだけで心臓がバクバクと破裂しそうなほどになるのを感じて、手足が緊張で思うように動かなくなりそうだった。
「イルミネーションがきらっきら……だね」
 遊貴はイルミネーションを指差して黒龍と一緒に見上げる。とにかく落ち着かなくちゃ。黒龍は深呼吸して、イルミネーションの電球の数を数えはじめる。ひとつ、ふたつ、みっつ……。
「黒たん」
 遊貴が呼ぶ声に、黒龍ははっと目線を遊貴に向ける。なに? という表情をしていると、遊貴は少し照れながら、プレゼントの包みをゆっくり出して、
「あのぅ……はい、プレゼント……」
 差し出した手と、黒龍の目を交互に見ながら、遊貴は黒龍がプレゼントを受け取るのを待つ。少し緊張がほぐれた黒龍が包みを受け取り、中身を確認する。
「……わ♪ ありがと、ゆき! とても可愛らしい……嬉しいよ!」
 赤く可愛らしいピアスを見て、黒龍は嬉しそうに声を上げ、早速付けてみる。
「……似合ってる、かな?」
 すごく似合ってるよ。と、微笑む遊貴に、黒龍は、
「ありがと。……メリークリスマス。ゆき」
 そういいながら綺麗な装飾のウォレットチェーンをプレゼントする。気に入ってもらえるかな……と黒龍は不安そうに遊貴を見ていたが、嬉しそうに自分のお財布にチェーンを取り付けるのを見て、ほっと安心した。
 遊貴はこういうときに思い切って告白とかをしちゃったほうがいいのかな……と悩むが、いざ切り出そうと思うと、なかなか言葉にはできなかった。それならまず、黒龍と手をつないでから……と考え、口を開く。
「あの、さ、て……手……つな……」
 手をつないでほしい。普段なら簡単に言うことができる言葉が、どうしても口から出せなかった。何度か言い直そうと口を開くが、どうしても言葉にならず、
「……なんでもない。デス……」
 ついにあきらめてそうつぶやいた次の瞬間、遊貴の手を黒龍が強く握る。黒龍も、遊貴と手を繋ぎたくて、遊貴が切り出してくるのをどきどきしながら待っていたのだが、遊貴があきらめてしまった瞬間、反射的に手を繋いでいたのだ。
「そんなんじゃ聞こえないよ。ゆき。……手なんて、繋いだ者勝ちよ。ね?」
 黒龍はそう言うと、遊貴の手を握ったまま2人で歩き始める。2人は、お互いの手の感触が、何よりも暖かく感じていた。



イラストレーター名:Garry