●『両腕一杯の幸せを君に』
沢山の人が賑わい、様々なクリスマスイルミネーションで彩られた駅前。 「綺麗ですね、クリスマスイルミネーション」 「え、ええ、そうですね……」 そんな中を青藍と六花、二人のカップルは歩いていた。 「光があるだけで、かなり体感温度が変わりますよね……」 と周囲のイルミネーションを見つつ感想を言う青藍だったが、六花はイルミネーションより別の事が気になっていた。 (「キ、キスもしたのですから、今更これくらいではずかしがってはいられません」) 腕を通して感じられる青藍の体温。 六花にとって、綺麗なイルミネーションよりも愛しい者の体温を感じていられるこの瞬間の方が大切だったのかもしれない。
しばらく二人で歩いていると、青藍の目に花屋が映った。 (「……丁度良い。折角だから薔薇の花束でも買って、六花さんにプレゼントしよう」) 六花を表に待たせ、青藍は花屋に入っていった。 とりあえず、彼が出てくるまで待ち続ける六花。しばらくして……。 「メリークリスマス、六花さん」 大きな薔薇の花束を抱え、青藍が店から出て来た。 薔薇の香りと共に、彼の手から花束がそっと渡される。 その花束は彼女に対する愛の大きさを表現したのだろうか。六花の両手で抱えきれないくらい大きいものだった。 (「今日の青藍様は普段より積極的でとても素敵です。私も負けていられません」) 薔薇の花束を受け取り、溢れんばかりの喜びに笑顔を浮かべ……。 「ありがとうございます、青藍様。……メリークリスマス」 彼に対する愛の大きさを示すように、青愛の頬にキスをした。 「ありがとう、六花さん」 予想以上のおかえしに嬉しくなった青藍は、彼女の身体をそっと抱きしめる。 六花もまた、そっと抱き返した。 「今日は寒いですからね……こうすれば、なお暖かいですよ」 「ええ、本当に……」 互いのぬくもりを感じられるこの瞬間は、二人にとっては永遠に等しいものだったかもしれない。 愛情を確かめ合うように、二人は永遠という刹那の一時を過ごすのだった……。
メリークリスマス。二人の愛が永遠のものでありますよう……。
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