●『merryXmas♪』
「駅前にすごく綺麗で大きなツリーがあるんですって! 見に行きましょう! カイトセンパイ!」 とある噂を聞きつけて、大急ぎで走って来たのは柚架。彼女の『憧れのセンパイ』ことカイトの元へ、元気いっぱい夢いっぱいに、身振り手振りを加えてはしゃぐ。 「おっけおっけ! 楽しみだな!」 カイトもそれを快く承諾し、二人で駅前へと出かけることにした。
駅前の広場に到着すると……というか、遠くからでも目立つ大きさだったのでずっと見えていたのだけれど。とても大きなクリスマスツリーの傍まで走り、主に柚架の方がツリーに夢中になった。 「うっわぁ〜、うっわぁ〜……」 キラキラのイルミネーションに負けないくらい、目をきらきらと輝かせて柚架はツリーを見上げる。カイトも同じく見上げるが、それよりも柚架の様子がちょっと気になった。 柚架はよっぽど楽しみで慌てて出て来たのか少々薄着で、ハイテンションな様子でツリーを見上げながらも身体を抱いたり手に息を吐き掛けたりして暖をとっているようだった。 (「寒いのかな……」) 確かにちょっと寒そうだったけど。それでもツリーへの興味の方が勝っているようで寒いといった類いの言葉は出てきてはいない。 「わぁ、あそこ! 天使のオーナメント可愛いです!」 「うわぁ、どんどん色が変わります〜!?」 「それにしてもほんと綺麗ですよねセンパ……って、あ、あれ!? センパイ!?」 あんまりにもツリーに夢中になりすぎていたせいで、いつのまにかカイトを見失ってしまった。 どうしよう、と、きょろきょろ辺りを見渡す柚架の目の前に、何か温かいものがぬっと差し出される。 「ほら、寒いだろ、色気ないけど、ツリー見ながら肉まんもいいんじゃね?」 柚架がツリーに夢中な間に、カイトはこっそり近所のコンビニで肉まんを買ってきていたのだ。 「あ、ありがとうございます!」 ほっかほかの肉まんを二人でぱくつきながら、再びツリーを見上げる。 「メリークリスマスです、センパイ♪」 「おう、メリークリスマス!」 そうしている時間は、とってもあったかい。それは柚架にとって最高のクリスマスプレゼントだった。
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