祝詞・勢 & 志衛亭・響

●『His courage and her answer』

 勢が給仕として勤める小さな喫茶店『例の店』。店長がほぼ趣味でやっている店で、彼はクリスマスを家族と過ごすために早仕舞い。夜中の数時間だけ、という約束で、勢と響の貸切状態を許してもらった。
 一昨年、去年とクリスマスを一緒に過ごした。居候までしている。けれど、ちゃんと告白なんてしていない。やっぱり恋人同士になるならはっきり言おう。
「付き合ってください!」
 そして答えをもらわないと。勢はそう考えていた。年々募る想いで今年のクリスマス、とうとう告白を決意した。
 後ろ髪を縛り黒エプロンを身に付けて、いつも通りにカウンター内に入る。いつもと違うのは、響がお客さんだということ、そして、心に決めた言葉。

 勤め先に初めて連れて来てくれた上に貸切だなんて、本当に嬉しい事をしてくれる。響は笑ってカウンターの中の勢にコーヒーを注文した。他愛ない会話をしながら、仕事着の彼を眺める。いつもの笑顔を浮かべながらも、でも少しだけ上の空のような勢。そんな彼の笑顔は、照れ隠しや辛い事も隠してしまうものだということを、響は良く知っている。もちろん、ちょっぴり不器用だということも。
 意を決した表情をして白手袋を外した勢が、彼女の名を呼ぶ。
「響!」
 志衛亭、といういつもの呼び方ではなかった。目をみはる響の目を真っ直ぐと見て、勢はカウンターから身を乗り出しそのまま両手で彼女の手を握る。
「好きです付き合ってください!」
 その笑みも彼のActiveさもひっくるめて私は祝詞・勢という人を心から愛している。戦場でも、privateでも一番傍にいてくれる彼が、とても愛おしい。響は勢の頬に顔を寄せ、そのまま口付けた。彼からの告白がとても嬉しくて、言葉よりも先に彼に触れたかったから。
 初めて唇で触れた彼の頬は思ったよりも柔らかくて、そして、ほんのりと暖かかった。
 唇を離した後は、とめどなく言葉が溢れてきそうだった。だから一言だけこう言うことにした。
「私もよ。My darlin'」



イラストレーター名:七夕