黒賀・重太郎 & 武神・志摩

●『SilentNight HolyLight』

 重太郎と志摩が二回目を数える二人だけの聖なる夜。彼らは横浜にある観覧車のゴンドラの中で過ごしていた。
「今日はク、クリスマス。聖なる光を静かな夜がつ、包み込むんだよ」
 最初は隣り合って座り、街の喧騒から離れた静かな時間を夜景を眺めて過ごしていた二人。ゴンドラが上がるにつれて、クリスマスに賑やかさを増している街が遠く、小さくなっていった。重太郎と志摩の眼下には、多くの光が集まって彩られている街並みが美しく広がっている。
「ねえ、寒いから……ここ、座って良い?」
 さりげなく重太郎の膝に手を置いて、志摩が上目づかいで彼を見つめた。重太郎はこくりと頷くと、彼女を膝の上に乗せてやる。横座りした志摩を、重太郎は優しく抱きしめた。
「ん……やっぱり重太郎とこうしてると落ち着く……。前に言ったよね、光は穏やかな影といて安らぐって」
 重太郎の首に腕を回し、志摩が呟く。
「こ、こうやって志摩を抱きしめるとね、ぼ、僕の心の奥があ、暖かくなるんだよ」
 すると、鞄の中から二人用の長いマフラーを取り出して、志摩は自分と重太郎を繋ぐようにそれぞれの首に巻き付けた。
「折角だからこれも、ね?」
 ふふ、と志摩が微笑む。そんな志摩を重太郎が見つめ返した。
 更に互いの左手を指を絡めて繋ぐ二人。その薬指にはきらりと光る銀の婚約指輪。
「……ゴンドラに乗ってると、凄く静か……夜空に二人で浮いてるみたい」
 二人の互いの顔はすぐ傍にある。その密着感が浮遊しているような思いをより感じやすくさせているのかもしれない。
「今年も一杯一緒に居てくれてありがとう……愛してるよ重太郎、ずっと一緒にいようね?」
 不意に志摩が重太郎の耳元で囁く。そのまま、志摩は彼にキスを贈った。
「ら、来年もそ、その先も。ずっと、ずっと僕は志摩の側に居るよ」
 重太郎は志摩を抱く力を少し強くする。
「志摩をあ、愛し続けるよ」
 彼女からのキスに応え、重太郎もまた志摩へとキスを贈るのだった。



イラストレーター名:七夕