蛍火・篠 & 北澤・諷治

●『はじめてのくりすます』

 篠と諷治が、初めて一緒に過ごすクリスマス。同じ下宿先から一緒に出かけて、イルミネーションなどが綺麗に飾り付けられた街でたくさん買い物をしたり、クリスマスの映画を見て二人で感想を言い合ったり……。美味しいご飯も食べて、すごく楽しいクリスマスだった。
 もちろん年に一度のクリスマスだから、街では恋人向けのイベントがあちらこちらで行われていて、諷治はせっかくだからと恥ずかしがる篠を引っ張って参加してみる。
「可愛い彼女さんですね」
 篠がこんなことを言われたりして、諷治は笑顔を浮かべる。
「俺、男なのに。背も高いほうなのに……」
 拗ねて口を尖らせる篠が可愛くて、諷治は終始にこにこと笑顔のまま言う。
「男としちゃ低いほうだろ、それに、最近の女の子は色々と発育が良いんだよ」
「くそー……」
 悔しがる篠をからかいながら、下宿までの帰路につく。あたたかそうな灯りから少し離れて思い出された冬の寒さに身を縮めたけれど、しっかりと繋いだ手からは、暖炉よりも暖かな体温が伝わってくる。
 ――ずっと離したくない。
 そんな思いが通じたのか、篠はじっと諷治を見て、それから少し照れたように微笑みかけてくれた。その顔がいつも以上に妙に可愛くて、今日は楽しかったな、となんとなく話をそらす。
「また、クリスマスじゃなくても、休みの日にでも出かけよう」
 次のデートの約束をすれば、篠は嬉しそうに頷いた。下宿に戻ったら、今日の買い物の戦利品を思いっきり広げよう。きっと今日の楽しい思い出がいっぱい思い出されるから。

 ふと、決まりの挨拶をしていなかったことに気付き、諷治が口を開く。
「メリークリスマス、篠。また来年も、一緒に過ごそうな」
「メリークリスマス、諷治。うん、来年も、再来年も、ずっとずっと一緒が良い」
 その言葉に答えるように、繋いでいた手をまたぎゅっと握る。そして諷治は、部屋のクローゼットに忍ばせた篠へのクリスマスプレゼントに思いを馳せるのだった。



イラストレーター名:七夕