リューン・クリコット & 霧島・茜

●『聖夜のお散歩デート』

 今日は、クリスマス。
 街はいつもと装いを変え、道にも心なしか普段よりも、手を繋いで歩くカップルの姿が多いように感じる。
 リューンと茜も、そんなカップルの内のひと組だ。
 そして、いつもよりも遅めに設定した待ち合わせ時間。周囲にも、3時を過ぎた頃からそわそわとオブジェやビルを見上げるひとが目立ち始めていた。
 空がじわじわと暗くなり、待ちに待った夜が訪れる。それに先駆けて、皆が期待していた、街中を飾るイルミネーションが光り出す。
 それらのイルミネーションよりもきらきらと輝いた瞳で、リューンは繋いだ手を振って茜に笑いかけた。
「にゅ〜♪ ライトアップが綺麗ですにゅ〜♪」
 ね、ね、と目で訴えるリューンに、茜も少しだけ口の端を上げる。リューンと共にいるようになって、まるで彼に引きずられるようにして、素直な感情を出せるようになってきたように思う。
「ん、そうだね。盛大に飾りつけられてて綺麗だねぇ」
 同意すると、リューンの顔が更に輝く。
 風は冷たいけれど、繋いだ手は温かくて、ふたりは微笑み合う。
 白い息が夜空に流れるのすら楽しんでいた茜に、けれどリューンは「寒いですにゅ?」と言っては自動販売機で温かい飲み物を買って、茜に差し出した。
「あ……ありがと」
「にゅ!」
 そうして、のんびりと向かう先は、中央広場。
 そこには今宵、デートのゴールに相応しい、色とりどりに輝くイルミネーションをまとった、大きなクリスマスツリーがそびえ立っていた。
 ふたりはそれぞれに歓声を上げて、そこへ駆け寄る。
「にゅお〜♪ すっごく大きくて綺麗ですにゅ〜♪」
「うん、すごくクリスマスって感じだよね」
 ツリーの前で、特になにをしようと決めていたわけではない。
 けれどクリスマス、それも特に聖夜とすら呼ばれる夜に、ふたりでこうして一緒に過ごせたことが嬉しい。
「また来年も、一緒にツリーを見ようにゅ〜♪」
「……うんっ」
 きゅ、と手を繋ぎ直して、ふたりはゆっくりと帰路に着いた。



イラストレーター名:ちゃき