●『校舎裏のすごし方』
それは校舎裏でのこと。 ゼルと今日介はクリスマスパーティーの準備中。 雰囲気を出す為にと、ゼルはサンタ服を。今日介はトナカイの着ぐるみと頭には角付きカチューシャという仮装なのですが、動きやすいようにと上半身だけ脱いで、今はトレーナー姿に。 ふたりは今、銀誓館の校舎裏にあるシンボルツリーをクリスマスツリーに変えようという作業の真っ最中です。 それはゼルと今日介から、所属している結社『結社裏のすごし方』のみんなへ贈る、内緒のサプライズ。
色とりどりのオーナメントにクリスマスライトを、ひとつひとつを丁寧に飾っていきながら、ゼルが途中で手を止めます。 「高いところは、背が高い今日介がやってよ」 ゼルの身長では高くて届かない場所は、今日介にお願いすることになりました。 すると今度はゼルがカラフルなオーナントを今日介へ渡します。 「今日介、センスあるから、これつけてよ」 そのお願いに気を良くした今日介は、任せろとどんどん作業を進めていきます。ゼルも褒められると弱いタイプなのですが、それは今日介も同じなのでしょうか。 気が付けば、作業をしているのは今日介ひとりきり。 あれっと振り返ると、ゼルはひとりのんびりとホットティーを飲んでいました。 「ゼル、おまえもやれよ」 「えへへ」 うまく乗せられていたと今日介が笑うと、ゼルもおどけて笑い返します。
合間に仲の良いやりとりをしながらも、作業はようやく完成です。 その頃には、もう辺りはもう暗くなっていました。そろそろみんなへ出した招待状に書いておいた時間です。 「後は、みんなを待つだけだね」 少し疲れたふたりは木の前のベンチに腰を下ろしました。 飾りつけの終わったシンボルツリーは、いまや見事なクリスマスツリーです。 イルミネーションを点けてみれば、校舎裏が華やかな彩りにうつされました。 その綺麗な光に自分たちも照らされながら、今日介がちらりと笑みを覗かせます。 「みんな喜んでくれるかな?」 うん、とゼルはすぐに頷き返しました。この出来ばえならきっとみんな喜んでくれるはずです。 団員みんなの驚いた顔が嬉しそうな笑顔に変わるところを想像してみると、どんどん楽しくなってきて、みんなの到着が待ち遠しくなってきます。 早く来ないかなと、今日介とゼル。笑い合うふたりの笑みに疲れはありますが、それ以上の達成感に包まれていました。
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