●『永遠の愛を君に』
冴え冴えとした空気に映えるイルミネーション。 聖なる夜には雪も舞い、更なる彩りを添える。 明はデートの最中だった。 クリスマスである今日は最愛の人、亜羅紫の誕生日でもある。 彼女と一緒にいられる嬉しさと、隣にいられる瞬間の楽しさと……明は亜羅紫と過ごせる時間に喜びをかみしめていた。 亜羅紫の様子を見る限り、彼女も楽しんでいるようだ。 そのことに明は我知らず口元を綻ばせる。 (「今日こそ」) ――そんな中、明は一つの決心をしていた。 それは。 (「……今日くらいは、男らしく自分の気持ちを伝いないと……」) クリスマス。亜羅紫の誕生日。 ……これ以上、彼女に想いを伝えるのにふさわしい日があるだろうか。 今も『亜羅紫』と名で呼べない……正直、普段はヘタレな自分。――ちゃんと亜羅紫に、想いを伝えたい。
キラキラした街の中。イルミネーションと、雪と。 振り返った明は亜羅紫の瞳に宿る楽しげな光を認める。 顔を上げた亜羅紫は、明と目が合うとふわりと笑った。 その笑顔に、明の中で亜羅紫への想いが改めて沸き起こる。
明は不意に足を止めた。 亜羅紫のスピードに合わせながらも、半歩ばかり前を歩いていた明が足を止めたことに気付いて、亜羅紫もまた足を止める。 「ん? どうかしたの?」 明は亜羅紫の声を聞きながら振り返った。 真っ直ぐに彼女の瞳を見詰め、その手を引いた。 頭一つ分、小さな彼女。 腕の中に閉じ込めれば、触れた箇所から亜羅紫の戸惑いを感じる。 驚きに丸くなった瞳を見ながらも、明は目を閉じた。 ――想いを、彼女へと。 「大好きだ、この世界で一番……誰よりも」 亜羅紫へと告げて、明は抱きしめる手に力を込めた。 明の行動に驚いて慌てた様子を見せた亜羅紫だったが、その言葉にゆるゆると瞬く。 色白の亜羅紫が上気すると、すぐに頬が赤くなった。 「ん」 小さな声で亜羅紫は呟いた。 明に触れる指先に力を込める。 「私も大好きだよ……」 亜羅紫はそう明に応じた。声音に滲むのは驚きよりも喜びだ。 亜羅紫の答えに明は再び腕の力を込める。 再び『大好きだ』と、唇だけでかたどった。
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