●『む、胸で窒息するぅ……(ガクッ』
クリスマスの夜。 葵と鈴音は二人並んでこたつに潜り込んで寝転がり、のんびりとテレビ鑑賞にふけっていた。 暖かい部屋、こたつにミカン、楽しいテレビ、大事な相棒。 これだけ揃えば、恋人同士じゃなくたって楽しいクリスマスを過ごすことが出来る。普段通りののんびりした時間って実は結構幸せなのだ、と再確認。
特に葵と言葉を交わすこともなくテレビに見入っていた鈴音は、不意に聞こえた寝息にぱちくりと瞳を瞬いた。隣に視線を向ければ、気持ち良さそうに眠っている葵の姿。 あんまりにも気持ち良さそうなので、思わず起き上ってしげしげと眺めてしまう。 (「相変わらず大きな胸じゃな〜……」) 温かそうなチョコレート色のニットの部屋着は美しい身体のラインを強調していて、葵にとてもよく似合っていた。思わず自分の胸元に手をやってしまい、鈴音はぶんぶんと首を横に振る。比べなくても、負けているのは分かっていた。同い年なのになんだか悔しい。 はふぅ、と溜め息をついて気を取り直す鈴音。 「葵? こんなところで寝たら風邪を引く……」 「……う〜ん」 起こしてやろうと鈴音が顔を寄せるのと、葵が寝返りを打つのがほぼ同時。 「むぐっ」 寝返りの勢いに負けてどさりと倒れ込んだ鈴音の顔の上に、葵のふくよかな胸が寄り掛かった。 突然のことに驚いた鈴音は、息苦しさに目を閉じたまま、葵の身体を押し退けようと慌てて手を伸ばす。
その指先に、今までに感じたことのないようなふわふわの柔らかさ。
それが葵の大きな胸の感触なのだと気付くのに時間はかからなかった。なんだか触ってはいけないような気がして、今度は慌てて手を引っ込める。 「葵〜起きるのじゃ……!」 鈴音の呼び掛けに気持ち良さそうに身動ぎする葵だったが、それ以上動くことも、ましてや起きてくれそうな気配も全く無い。 仕方なく、顔を横に振ったり、身体をずらしたりして逃げ出そうと試みるものの、絶妙なタイミングで葵の腕がしっかりと鈴音の身体を包み込んで、抱き締めてしまう。 「んー……鈴音さん」 穏やかな寝言。簡単には、逃がしてくれそうにない。
でも、なんだかすごく……柔らかい感触が気持ちいいかも。 抱き締められたまま葵の胸に顔をうずめ、温かい肌の感触にまどろみ始めてしまう鈴音だった。
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