●『聖夜の星物語〜When you wish upon a star〜』
今夜は星が綺麗だったから。かなでは秀一に誘われて、クリスマス天体観測へ。 とは言っても大層な場所に出かけるわけでもなくて、秀一の家の屋根の上で、ふたりだけの小さな天体観測だったのだけれど。 かなでは秀一から貰ったクリスマスプレゼントである薄桃色の手編みのマフラーを首に巻いて、暖かい格好でやって来た。 秀一は寒さをしのぐためのホットココアをポットに入れて、二人で屋根の上に上がる。 「オリオン座は見えるかな〜?」 「俺は星、あんまり詳しくないけれど……」 こうして眺めているのも悪くないな、と空を見上げる秀一の隣で、かなでも上機嫌で同じく空を見上げる。 お目当てのオリオン座を探す最中、ふとココアを注ぐ秀一の寒そうな姿が目にとまり。 「えいっ!!」 「わふっ!?」 秀一の首に暖かな毛糸が触れて、そして毛糸以上に暖かい、かなでの身体がすぐ傍に。かなでが巻いていたマフラーを、秀一にも巻き付けたのだ。 「2人であったか一石二鳥ですよ? こうやっているのが一番エコで幸せです♪」 「いや、まぁ、うん。そりゃ、あったかい、けども」 小学生の秀一と、高校生のかなで。色々とうわてなのは矢張りかなでの方で。 ……こんなに距離が近くては、かなでの顔を直視出来ない。というか、照れてしまって天体観測どころではない。 「あれぇ、秀ちゃんさては照れてますね? うふふ、可愛いなぁ♪」 ぎゅむっ。 マフラーだけでは飽き足らないというのか、かなでの腕が秀一の小さな身体を、背中側から包み込んだ。 「!?」 とてもあったかい……というかむしろ、熱い。なんせ秀一の顔は真っ赤になってしまっていたのだから。 (「お、お前! ほんっとうに男心のわっかんない奴だなー!?」) 秀一は慌てるが、かなではニコニコと秀一を抱きしめて。 「……もう、本当に可愛いんだから。弟が出来たみたいで嬉しいです」 弟としか見られていないことは、少しだけショックだったけど。背面から抱きしめられているので顔を見られないことがせめてもの救いだった。 「……まぁいいか」 「?」 それでも、二人で過ごす時が幸せなのは変わらないのだ。 「あったかいし、星も綺麗だし。今夜は幸せなクリスマスですね♪」 きらきらと輝く星々に見守られて。友達以上恋人未満なふたりの夜は、少しだけ賑やかに過ぎて行った。
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