葉月・とろん & 菫埜・みか

●『大好き』

 今年もクリスマスがやってきた。今日はとろんの部屋で、二人きりのクリスマスパーティー。二人でクリスマスっぽい格好……つまり、各々用意したサンタ服を着て。テーブルの上には、さっき二人で買ってきたケーキが置いてある。

 ソファーに、二人並んで座って。お互いのグラスに、ワイン……は、未成年の二人がアルコールを飲むわけにはいかないので、その代わりにとろんが用意したジュースを注ぐ。
「あたしは、ワインでも良かったんだけどね」
「でも、年齢的にね。私が成人したら、一緒に飲めるし、それまで我慢しないと」
 グラスを持って、見詰め合う。そして、微笑み合って。
「「メリークリスマス」」
 チンッと澄んだ音を立てて、グラスが合わさる。

 ケーキを食べながら、たくさん二人で話をする。二人で過ごす時間は、いつだって楽しいし、幸せで。
 そして……楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。
「……ん……」
 みかが、目をこすっている。時々、あくびもしているし……。
「おねむさん?」
 とろんがみかの顔を覗き込んで訊ねると、みかは眠たそうに瞬きを何回かする。それでも、眠そうな目をして、とろんの方を見て苦笑する。
「うん……ちょっとね」
「じゃあ、眠っていいよ。あたし、膝枕してあげるから」
 とろんが自分の膝をぽんぽん叩いて、ここに寝るようにと促す。すると、みかはちょっと照れながらもそこに頭を乗せて横たわった。そのみかの頭を、とろんは愛しげに撫でていた。
「ねえ、みか。もし……この飲み物が、本物のワインだったって言ったら……どうする?」
「え? ……そんなの、どっちでもいいと思うよ。こうして……」
 みかは身体を起こして、とろんに抱きつく。
「とろんさんと、一緒にクリスマスを過ごせるんだから」
 とろんも、みかを優しく抱きしめる。
「あたしも、みかと一緒に過ごせて幸せだよ」
 そして、二人は同時に呟いた。
「「大好き」」

 抱き合って、キスをして。二人だけの幸せな時間は続くのだった。



イラストレーター名:水瀬るるう