●『【くりすますver】これが見たかったんや!Part2』
街の光景も人の流れも、クリスマスムード一色に彩られたその日。 クリスマスに合わせた私服が欲しいと思ったカサンドラは、親友であるカイトを誘った。 「――というわけで、最近のムーブメントの衣装はこれだ!」 バン、と効果音が聞こえてきそうな勢いでカサンドラの目の前に突きつけられたものは、カイトが彼女のために見立てた衣服だった。 出てきたものはサンタ衣装だ。赤地にファーの付いたロングコートまでは良かったが、次に現れたのは同じ生地とファーで構成されたこの季節にはそぐわない水着だった。 「………………」 カサンドラはその衣装を手にしつつ、半ば呆けてしまう。 「ほら、外でみんなこんな感じだったじゃん! 今回はカサンドラの露出っプリをベースに、クリスマスっぽくコーディネートした! 僕天才! さあ、町にくりだそう」 「私でもこんな物が流行じゃないことくらい分かる!」 「ぐは……っ!」 得意気に語るカイトをそう言いながら思い切りどつくと、彼からなんともいえない声が返ってくる。 見事に転がったカイトを横目で見やりつつ、カサンドラは手にしたままのその衣装を離さずにいた。そして言葉なく小さなため息を漏らすと、そのまま着替えをするために彼の前から姿を消した。
「似合うぜ! うん! いつもとかわらないけど!」 親指を、ぐ、と立てながら、カイトがそんな賞賛の言葉をカサンドラに投げかける。最後の言葉が多少気にかかるものであったが、彼女はそれについては何も語らずにいた。 そしてその代わりに、小さく短い返事をする。 「……そうか」 普段から露出の多い服を身にまとっている彼女ではあるが、『女』と扱われることは好んではいない。だが、今日は何故かその気持ちすら拭えてしまえるような不思議な気分だった。 『似合う』、と褒められた事が、僅かに嬉しかったのかもしれない。 最初は苦い表情をしていたカサンドラは、徐々にその表情をゆるめて小さく微笑んだかのように見えた。 「……ぃよしっ」 まんざらでもなさそうな彼女を見てカイトは、自分の肩口で握りこぶしを作り上げ、満足そうにそう言って笑った。 小声で発したものであったので、カサンドラには届いていなかったようだが、それで良いらしい。 親友同士である二人の、ほんの少しの和み時間。 そこには僅かなズレもあったように思えたが、それでも優しい気持ちが後に残るような、そんな時間でもあるような気がして、二人は個々に、ふ、と再び笑うのだった。
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