●『雪聖夜』
「わぁ……」 仲間内で開いたクリスマスパーティの最中、降り出した雪に華呼が嬉しそうに声を上げる。 窓ガラス越しに眺めるだけでは我慢できなかったのか、ドレス姿のままで少女は庭におりる。 「風邪を引くぞ」 「ありがとう」 思ったよりも寒かった冬の風。 差し出されたコートに残ったいつきの温もり、彼の思いやりに、華呼は少し嬉しそうな顔で感謝の言葉を告げる。 そうして二人、ホワイトクリスマスとなった聖夜を、はじめての二人で過ごすクリスマスを堪能する。 「去年のクリスマスは別々に過ごしていましたね」 「あの頃は、二人でこうしているなんて想像つかなかったな」 「本当に」 そう華呼が返し、二人して運命のいたずらに、こうして最愛の人に出会えた喜びに笑みを浮かべる。 この幸せな時間がずっと続けばいいと、受け取った指輪を人差し指でなぞりながら祈りを捧げる。 「去年のプレゼントはお友達からだったけれど、今年は特別ですね」 「来年も、その先も、ずっと特別だよ」 今年のクリスマスの贈り物は、お互いに自分のイニシャルを刻んだ指輪だった。 いつも貴方のそばにいます。 そんな想いを込めたプレゼント。 (「本当は凄く恥ずかしかったけれど」) いつも照れてしまって行為を素直に表に出せない華呼。 常にいつきの方から『好き』という気持ちを向けられる関係。 せっかくのクリスマスだからと、正直に自分を出してみようとした結果だった。 冬の冷たさに吐き出す息が白く染まる。 かけて貰ったコートの暖かさを実感していると、いつきが微笑みかけてくる。 そのストレートな愛情の表現に、華呼は顔を真っ赤に染めて恥ずかしながらも微笑みを返す。 出会えた幸せと、今こうしている喜びと、いつきから受け取った優しさを。 少しでも返せるようにと、いつきの手を取りそっと寄り添う。 冷えかけたそれぞれの手は、二つ合わさることでお互いを温め合う。 愛情に包まれる喜び、そんな素晴らしいクリスマスを過ごせる幸せを、触れ合う体を通して二人は噛み締めるのだった。
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