●『初めての二人の共同作業in聖夜』
クリスマス。一人暮らしのためか、普段は小奇麗だが殺風景なこの部屋も、今日ばかりは紙で作ったチェーンや、飾りつけられたクリスマスツリーなどで装飾されていた。 テーブルの前に並び、仲良くケーキ作りをしているのはレイナと、部屋の主であるヴァイスリットである。 生クリームの入ったボウルを、泡立て器で一生懸命かき混ぜているレイナ。 時折レシピ本を持っているヴァイスリットに確認を取りながら作業を続けていた。 「えっと……まだ混ぜた方がいい?」 ヴァイスリットはレイナが手にしているボウルの中身をひょいとのぞき込む。 「まだまだ、いっぱい混ぜていいよー?」 空中を人差し指でかき回すようなしぐさをしながら、ヴァイスリットはレイナの様子をを楽しそうに見つめていた。 真剣な彼女がかわいらしくて仕方ないヴァイスリットは、思わず顔をにやけさせる。 にやにやと笑みを浮かべるヴァイスリットに気付いたレイナは、いったん手を止めてむうっ頬を膨らませた。 「何で笑ってるのよ、ヴァイス」 「笑ってない笑ってない。俺は至極真面目っ」 慌てたように否定するも、にやけ顔のままでは説得力があるはずもなく。 「ほんとかなぁ……」 ますます笑みが深くなったヴァイスリットに、レイナは作業を再開させながらも疑わしそうな視線を投げかける。 と、少々乱暴に混ぜていたために手元が狂い、ボウルからはねた生クリームが彼女の頬についた。 「わっ!?」 驚きの声を上げれば、ヴァイスリットはくすりと笑みをこぼし。 (「う、うーん……かっこ悪いわね……」) はずかしさにレイナはわずかに頬を染める。 「レイナ、大丈夫?」 ヴァイスリットはにやける顔をごまかすついでに、レイナの頬についたクリームを指で取ってやった。 「わわっ……」 瞬間的に耳まで赤くなるレイナ。ヴァイスリットはやわらかく微笑んだまま、赤面している彼女をうながす。 「ほら、後少しよー? 頑張って」 「う、うん……」 今度ははねないようにと、丁寧な手つきで生クリームをかき混ぜるレイナ。 (「ら……来年はこうならないように練習しておきましょう。うん」) いまだに熱い頬を自覚しながら、レイナは心の中で何度も頷き。 (「来年もまた、こんな風に過ごせるといいねえ……」) ヴァイスリットは指についたクリームをぺろりと舐めながら、いっそう優しい笑みを浮かべながらレイナを見守るのであった。
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