フィーナ・レッドスプライト & 乃々木・栗花落

●『騒がしきメリークリスマス』

 今宵はクリスマス。ホーリーナイトです。
 クリスマスなので、サンタさんが登場します。
 赤いワンピースに赤いケープをまとった可愛いサンタさんが二人。
 ベルをかき鳴らしながら、そりに乗ったサンタさんが二人。
 栗花落は塀の前に立ちきょろきょろ。
 フィーナは大きな袋をよいこらしょ。
 サンタさんだから、夜に人様の家の前でうろついていても一切不審ではありません。
「さて、この家にプレゼントを配ればいいのね」
 両手を腰に当てたフィーナが栗花落に聞きました。
 もし間違えていたら大変です。
 悪い子に、プレゼントをあげてしまうかもしれないからです。
 自信満々に頷く栗花落。
 しかしフィーナは屋根を見上げ、少し困り顔。
「……でも入ろうにも煙突がないですわ」
「入るところがなければ、作ればいいんだよっ♪」
 現在の日本で、煙突が付いている家はなかなかありません。
 でもサンタさんはプレゼントを届けなくてはいけません。
「いい案ですわね、栗花落やっておしまいなさい!」
 満面の笑みで栗花落は『10トン』を書かれた袋を振り上げると、ぐるぐると振り回して外壁に叩きつけました。
 ──ドンガラガッシャーンッ!!
 爆音を轟かせ、壁が破壊されました。
 さすがはサンタさん。クリスマスの奇跡です。
 もうもうと立ち上がる砂煙に、ラブリーサンタさんたちのシルエットが浮かび上がりました。
「さぁ、クリスマスプレゼントですわ、受け取りなさい!」
 夜の街に響き渡る大きな声で、腕を組んだフィーナが指示を出します。
 栗花落はたった今、壁をぶち破った袋をまじまじと見つめました。
 袋が破けて、中に入れてあるプレゼントが顔を覗かせてしまってます。
 月の光を反射してきらきら輝く、鋭利かつ重厚なとげ。
 破れてしまったものはしょうがありません。
 栗花落はにっこり微笑むと、良い子に向かって10トン袋を力の限り投げつけました。
「はいっ♪ メリークリスマスっ☆」

 全ての良い子に幸あれ♪



イラストレーター名:五月紅葉