●『聖夜の誓い』
頭上で瞬くのは、数え切れないほどの満天の星。 ブライトと憐は、静かな広場の隅に腰掛けてその光を眺めていた。そうしてから、どのくらいの時間が経っただろうか。 交わす言葉はないが、同じ事を考えているのは分かっていた。 二人の間を流れる空気がどこか悲しげなの理由も。 「亡くなった方たちは星になる、って言いますよね……」 ブライトは視線を空に向けたまま小さく呟いた。憐は、視線を地面に下げた。 「……知ってる、お兄さんもそう言っていたから」 少し間を置いての返答だった。吐き出された言葉が苦しそうなのは、かつての仲間のことを思い出しているから。 「お前は、絶対にいなくならないよな?」 素直になれない彼女なりの、精一杯の甘えた言葉。だから、ブライトは体を少し伸ばして憐の顔を覗き込むようにして、はっきりと言った。 「大丈夫です、憐さん。僕はずっと傍にいます」 「いやだぞ、私は。……お前がいなくなるの、絶対いやだぞ」 今にも泣きそうな表情の憐に、ブライトはふわりと笑った。星の光がおりてきたような、淡くて綺麗な笑顔だった。 「絶対にいなくなりません。二人で、ずっと一緒に生きましょう」 決意を込めた強い言葉に、憐も小さく微笑む。風が吹き抜けて、彼女の藍色の髪と二人の約束の証であるリボンが揺れた。 ブライトはそれを見て、少し躊躇してから、憐の肩を抱き寄せた。 突然の事に、憐が頬を赤らめてちらりと彼の方を覗うと、ブライトも見て分かるほど頬を赤く染めている。 自分の行動に照れているのだろう、視線は前に固定したまま、こっちは絶対に見ない。 憐はそれを見て、思わず声を出して笑ってしまった。 「なんで笑うんですか!」 「だって……、いや、うん、ごめん」 先ほどまでの胸のつかえが、笑い声と一緒にどこかへ行ってしまったようだ。置かれた手に逆らわず、憐はブライトの肩に頭をのせた。 その温かさと心地よい重さに、ぷう、っと頬を膨らましていたブライトは表情を戻した。そして、改めて彼女の肩を抱く手に力を入れる。 「生きましょう、いなくなった皆さんの分まで」 軽く眼を閉じていた憐は、そのまま頷いた。 「……ああ、生きよう。そして……………」 続く言葉は、二人だけの秘密にしておこう。
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