●『星空の下で』
煌びやかだった学園でのクリスマスパーティー。皆と話し、騒ぎ、はしゃいできた。それはやっぱり楽しいもので、そこから帰ってきた哲人と炯士の心はほっこりと満ち足りている。 ただ、そうした賑やかなクリスマスもいいけれど、ゆっくりと静かなクリスマスを過ごすのもまた、悪くない。いま二人は自宅マンションの屋上で、学園の時とは別の、ゆるりとしたクリスマスを過ごしていた。 「ていうか、今年も二人でクリスマスって……」 炯士は苦笑を浮かべながら、温かなココアの注がれたカップを傾ける。吐く息も白い霧となって消えるような寒さの中、ぽうっと体の底から温まるような甘さが心地よい。哲人が手作りをしたケーキを、夜の星空を見上げながらつつくのもまた格別だ。 「ちょ、悲しくなるからそう言うこと言わんでや……」 「わ、ごめん、そんなショック受けないでよ」 切ない様子で肩を落とし、とほほとうな垂れる哲人。炯士がぽふぽふと彼の肩をたたいて慰める。 「でも俺……」 ぽりぽりと頬をかきつつ、照れくさそうに視線を外す炯士。少しの逡巡を置いて、彼は哲人に笑いかける。 「哲ちゃんと二人のクリスマスも、好きだよ?」 きょとんとした目で哲人は炯士を見つめたが、すぐに弾けるような明るい笑みを浮かべた。 「俺もっ……炯士といるのが、一番楽しいっ!」 炯士と反して哲人ははにかむ様子もなく、屈託のない笑顔を向ける。そうして心底嬉しそうに笑う哲人を見て、炯士は、 (「犬みたいだ」) なんて微笑ましく思いながら、彼の頭をぽんぽんと撫でた。 この関係が始まったのは、いつからだったか。ともあれ長い付き合いになる。いつも一緒にいるのが当たり前。楽しいことも苦しいことも分かち合ってきた。掛け替えのない、大切な大切なパートナーだ。 「来年もまた二人だったら笑ってやる」 戯れ半分に軽口をこぼす炯士に、哲人は笑ってこう返す。 「どこまでも付き合いますよ、相棒やからね」 来年はどんなクリスマスが待っているのだろう。同じような満点の星空のもと、今はまだ知らない誰かと語り合っていたりするのだろうか。 でも、願わくば。また来年のクリスマスも2人でいれたら――口にはしない互いの想いは、共通だ。 聖なる夜に相応しく、澄み切った寒さの夜空には、瞬く星々のオーナメント。そんな夜、その空気はひんやりと冷たくとも。笑い合う二人の心は、ぽかぽかと暖かい。
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