姫琴・睦美 & アクアリース・シフォン

●『貴女が私のサンタさん♪』

 きらきらと、色とりどりに光るイルミネーション。装飾された商店街の中心には大きなツリーがおかれ、クリスマスの雰囲気を十二分にかもしだしていた。
 クリスマスということで、商店街に軒を連ねているお店の多くでは、クリスマスに関係したセールやフェアを開催している。
「キャー! アクアちゃんのサンタ姿、とても可愛いですわ!」
「あ、ありがとう。睦美さんも、とってもせくしー、です」
 商店街の中にある、とある服屋。試着室の前ではアクアリースと睦美が、お互いにサンタの衣装を試着していた。
 睦美が着ているのは、胸元を大きくはだけさせ、見る者の目を奪う露出度の高いサンタ服。
 それとは対照に、アクアリースの着ている衣装はごく普通のミニスカートのサンタ服だ。
(「だけど、それがいいのですわー!」)
 目立った派手さはない。だが、そのスタンダードな可愛さに、睦美はメロメロに魅了された。
 感極まった睦美は、がばぁっとアクアリースに抱きつき、そして愛おしむように頬ずりをする。
「サンタ様ありがとうございます! こんな可愛いサンタ様を私に下さいますなんて! アクアちゃんイズサンテスト! アクアちゃんこそが本当のサンタ様! ……ということは、いつものお爺様は偽者? ソリに乗ってる爺いサンタクロースは偽者!? ならばっ、その爺いを倒してアクアちゃんサンタ体制を樹立しますわ!  ……まぁ、私以外のところに行かせるつもりはないわけですけど」
「なに言ってるんですか……倒しちゃ、駄目ですよ……?」
 
 その後も、やたらとハイテンションな睦美は、次々と別の衣装を持ってくる。自分が着るためではない、全てアクアリースに着させるためだ。
「はいアクアちゃん。次はこれですわ! ミニスカニーソサンタ!」
「ま、また着替えるんですか?」
「もちろんですわ! さぁさぁ、まだまだありますわよ。ゴスロリサンタ、猫耳サンタ……アクアちゃんが着たらきっと、とぉぉぉっても可愛いですわ」
「もぅ、しょうがないですね……」
 ちょっと怒りつつも、アクアリースは苦笑しながら睦美に付き合った。
 そんなアクアリースの態度に、睦美は思わず鼻血が出そうになる。胸がときめいて、ときめいて、もうキュンキュンだ。
「ではこのビキニサンタ服を」
「調子にのっちゃ駄目、です……」
 どさくさまぎれに薦めた露出度の高い衣装は、あっさり一蹴されてしまう。
 だが睦美は諦めない。こっそり買っておいて、後で絶対着せてやる。そう決意して、密かに闘志を燃やすのであった。



イラストレーター名:新井テル子