常陸・忍 & 六御・リネ

●『「「も、もも勿体なくてマフラー外せません!!」」』

 凍えた風が吹く外から帰ってきた、忍とリネの二人。外があまりにも寒かったから、二人は一つのマフラーを巻いて帰ってきた。
 お部屋の中では、帽子は取りましょう。と、昔どこかで聞いたような注意事項を思い出す。帽子を脱がないといけないなら、もちろんマフラーも一緒に脱がないといけないだろう。
((「でもでも。そ、そんなこと。ももももも勿体なくてマフラー外せません!!!」))
 心の中の台詞さえもシンクロしてしまう二人は、顔を見合わせると顔を赤くしながらも笑顔で笑いあう。はたから見ていても、とても幸せそうな素敵なカップルだ。
 それでも、付き合いだしたのは最近のことだ。出会ったのは、山登りの最中。劇的な出会いをした二人。それから今回で3度目のクリスマス。今まで、二人とも『片思い』だった。周りの人たちが「え? お前たち、まだ付き合ってなかったの?」と言われるくらいに、お互いがお互いの事を好きなのが分かっていたのに。でも、『片思い』だったのも今回のクリスマスで終わり。リネが、忍へ告白。その返答は、勢い余った忍の熱い抱擁とキスだった。
 暖かい部屋の中、一つのマフラーを脱ごうともせず、二人はにこやかに笑いながら会話を交わす。ただ会話をしながらもその内心は、ものすごく慌てていた。
(「さっきから噛まずに喋っているの奇跡なんです。サンタさん!」)
 忍はきちんと会話が出来ていることをサンタクロースに感謝を。
(「どどど、どうしよう。さっきから、ど、どどどどどもっちゃう、私!!!」)
 リネは心の中でも、どもってしまっていて、思考が空回りしていた。
 互いが互いに、慌てていても、ふと目が会うと、それだけで今年一番の笑顔が作れてしまう。
((「あぁ、もう!! 幸せです!! サンタさん!!!」))
 聖なる日に、二人はサンタクロースに感謝をする。素敵な恋人の笑顔を見れることに、一緒に過ごせることに。そうして、リネと忍の二人は眠くなるまで、互いに見つめあい笑いあうのだった。



イラストレーター名:茂野