●『ダンスと少女と猫少年と』
光は、既に知っていた。 古武道部の部長から聞いたこと。 クリスマスイブは、恋人と過ごす日だということ。 けれど……。 「恋人っていうのが、にゃんかよくわかんね〜けど、大好きな子と過ごす日にゃんだって!」 うきうき気分で、着替えていく。 「ぼくにゃ恋人は、よくわかんねぇ〜けど、月乃にゃのこと大好きにゃから、クリスマスパーティで一緒に過ごすにゃの♪」 ぼふんと着ぐるみから顔を出して、笑顔を見せる。 「いっくにゃ〜!」 愛らしい尻尾を揺らして、光は体育館へと走り出した。
そこは、コスプレ会場。 光も背中に白い羽をつけた黒猫の姿で突撃していた。目指すは大好きな月乃の元へ。 「うにゃ〜〜! 月乃にゃは眩しいのにゃよ〜」 なんと、月乃は可愛らしい白いミニスカ天使姿になっているではないか。 近くに居たライバルと火花を散らしつつ、光は月乃がフリーになる瞬間を待つのであった。 ロシアンケーキを堪能し、他のみんなといっぱい遊んだ後。 いよいよ、お楽しみのダンスパーティーが幕を開ける。 「月乃にゃ〜!!」 そのときは割と早く訪れた。 光は一直線に天使姿の月乃に、だきゅっとしようとして。 ささっ。 避けられてしまった。 だが、それで諦める光ではない。 実は避けられることも想定内。 本当は別のところにある。 「あっ……」 きゅっと光が掴んだのは、月乃の手。 「月乃にゃと踊りたいにゃ〜」 だめかなと首を傾げる光に月乃は、表情を変えずに。 「少しだけならいいですよ……」 「やったにゃ〜!!」 飛び上がる勢いで、光と月乃はそのままダンス会場へ。 可愛い猫の天使と、白いミニスカ天使が踊り出す。 右へ左へ。 その姿は、愛らしく可愛らしく。 そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていく……。
「一緒にダンス、とっても楽しかったにゃ」 にっこり笑顔で光は月乃にそう告げる。 それは心からの言葉。 光のその言葉に、月乃はほんの少し、笑みを浮かべた。 まるでそれは、天使の微笑みのように……。
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