●『クリスマスのプレゼントは雪と…』
遊歩道に等間隔で並ぶ木々は、今日はクリスマスイルミネーションに彩られていた。 昼間は家族連れで賑わう自然公園も、日が落ちれば人は少なくなってくる。静かな遊歩道を、桜香と秋宙はのんびりと歩いていた。 イルミネーションは非同期に点滅し、きらきらと輝いている。まるで光のトンネルを抜けているかのよう。桜香は嬉しそうに周囲を見回しながらその中を歩いていく。そんな桜香の後ろ姿を見守るように、数歩後ろから追う秋宙。 履いているスカートを翻すようにして、不意に桜香がくるりと振り向いた。桜香につられて秋宙は足を止める。 「秋宙くん」 桜香はにっこり笑い、コートのポケットから何かを取りだした。綺麗にラッピングされたそれを、両手を伸ばすようにして差し出す。 「これ……クリスマスプレゼント」 プレゼントを受け取り、秋宙はびっくりしたような顔をした。 「俺に?」 「うん」 「……ありがと」 照れたように言い、秋宙は顔をくしゃくしゃにして笑った。コートのポケットを探り、同じようにラッピングされた小箱を取りだす。 「じゃ、これは俺から」 「わたしに?」 「うん」 片手でずいと差し出されたそれを、桜香はおずおずと受け取った。二人の手が触れた時、その手にふわりと何かが落ちてきた。 「あ……」 桜香は空を見上げる。暗くなった空に、ちらちらと白いものが舞い始めていた。 「雪……」 桜香の視線の先を追うように、秋宙も空を見上げる。触れたら消えてしまいそうなほど儚い雪のかけらが、イルミネーションに混じって空を彩る。 「きれい……」 「すげぇ偶然だな」 まさかこんなタイミングで降り出すなんて、と秋宙は呟く。桜香は雪の動きを目で追いながら、うっとりと頷いた。 二人はしばし無言で空を見上げていた。ふと桜香が視線を戻すと、こちらを見ている秋宙の視線とぶつかった。秋宙はニヤリと笑い、人差し指を立てて空を指差した。 「これも、俺からの桜へのプレゼント」 「えぇ?」 桜香は思わず笑い声をあげる。 「すごい……プレゼントだね」 「だろ?」 「ありがとう。なんだか、凄く嬉しい」 嬉しそうな桜香の顔を見て、秋宙は笑った。
互いのプレゼントを大事そうに抱え、二人は再び並んで歩き出す。遊歩道に、楽しそうな二人の笑い声が響いた。 メリークリスマス。大切な君へ。
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