神吹・青鉄 & フロン・アルタナシナ

●『Verdant&Angel〜クリスマスデート〜』

 いつもの場所で待ち合わせ。
 なのに、どきどきするのは、きっと、クリスマスな所為。
 そう、賑やかなクリスマスソングが恋人達の心まで弾ませてくれるから。
「何だか、いつもと違う気がします……」
 夜の街を歩くフロン・アルタナシナ(愛に燃える堕天使)(b38077)と、神吹・青鉄(精霊機構)(b39917)。
「ん……雪も降ってきたしな」
「そ、そうじゃなくって……」
 町のイルミネーションが、フロンと青鉄の顔を照らす。
(「本当にわかってるんでしょうか?」)
 思わず、青鉄の顔を盗み見る。今日は特別な日。
 ましてや、恋人同士で過ごせるなんて、素敵なクリスマスなはず。
 なのに、ロマンチックのロの字もない。
 ならばと、フロンは思い切った行動に出た。
「青鉄さん、腕、組んでいいですか?」
「いいよ」
 その彼の声にフロンは嬉しそうな顔で、彼の腕に抱きつく。
(「あっさり成功しちゃいました」)
 でも、それが嬉しかったり。やっぱりこうでなくてはとも思う。
「マフラーよりも、暖かいです」
「そう……だな」
 微笑む彼女の顔に、青鉄は思わず笑みを浮かべる。
 確かな温もりが、その腕に感じられた。

 静かな夜。
 二人は一緒の部屋に居た。
 外はまだちらちらと雪が降っていた。
 けれど、その量はそれほど多くなくて。
 互いの心音が、聞こえる気がした。
「寒くない?」
 青鉄が隣に居るフロンに声をかけた。
(「緊張、してる?」)
 当然だと思う。暗がりの中、ましてや二人っきり。怖いと思わない方が不思議かもしれない。
 それがたとえ、ゴーストを相手に戦っている能力者だとしても。
 長い金髪が揺れて、フロンが振り返る。薄暗くてもわかる、僅かに強張った笑み。
「ストーブもついてますし、それに青鉄さんも傍にいてくれてますし……」
「なら、こうしても平気、だな」
 突然、青鉄が後ろから抱きしめた。彼女の気持ちを和らげることができるのなら。
「こ、青鉄さんったら……」
「いいだろ、こういうのも」
「………」
 青鉄はさらにフロンの耳元で囁いた。
「ただ、こうしてるだけでいい。だから、今日は一緒にいよう。だって今日は……」
 フロンは頬を染めながら、その青鉄の言葉にこくんと頷いた。
 ゆっくりと二人は体を横たえて。
 二人だけの時間は、まだ、始まったばかり……。



イラストレーター名:Ism