春野・愛美 & 葉月・瞬双

●『First Christmas』

 瞬双は、高鳴る心臓の音を自分の耳に聞きながら、愛美の隣に座っていた。
 恋人になってから、始めて迎えるクリスマスイヴ。
 そのときを愛美の部屋で迎えて、二人は喜びを語り合う。
「今日は、今までで一番幸せなクリスマスだよ」
 瞬双に笑顔で言われて、愛美が顔を赤くする。照れ隠しなのか、部屋に幾つもあるぬいぐるみの一つを抱きしめて、彼女はそこに顔を埋めた。
「うー……、愛美も、今が今までで一番ドキドキする時間かも……」
 照れと恥ずかしさで顔を熱くさせつつも、ぬいぐるみの向こうからチラリと瞬双を見て、愛美は言った。小さくとも、ハッキリ聞こえるよう声で。
 言ってから、また恥ずかしくなってぬいぐるみに顔を埋める彼女の髪を、瞬双は慈しむような手つきで撫でた。
 愛美が隣にいる。
 その事実が、彼の手を伝わって幸福感となって全身を隈無く駆けめぐる。
 ともすれば、抱きしめてしまいそうになる衝動を今は抑えながら、瞬双は愛美に微笑みかけた。
「メリークリスマス、愛美」
「うん、メリークリスマス、瞬双」
 微笑み返してそう言う愛美に、彼は微笑みを向けたまま、
「プレゼント、あるんだ。受け取ってくれるかな?」
 そう言った。
 愛美が、表情をパァっと明るくする。
 瞬双は頷くと、彼女の手を取って、用意しておいたリングをその指にはめさせた。
 雪の結晶のデザインのピンキーリング。
 可愛らしいそのデザインは、まさに愛美のために設えられたような印象だった。
 愛美は自分の指にはめられたそのリングをマジマジと見つめて、一言、「嬉しい」と呟いた。
「あのね、愛美からもプレゼント、あるんだよ」
 はにかむように笑って、愛美も瞬双の手を取った。
 そして、その指にはめられたのは、シンプルなデザインのシルバーリング。
「ありがとう、愛美」
 同じ手の、同じ指にお互いのプレゼントの指輪をはめて、二人はしばしそれを眺めた。 愛美が、瞬双に身体を預けてくる。
 そして彼女は彼の腕に自分の腕を絡ませて、
「こうして、ずっとずっと、一緒にいられますように」
 言う彼女の頬は、やはり赤かった。
 二人だけの時間を、二人だけで過ごして。
 けれどそれは、本当に幸せなひとときで。
 瞬双だ、愛美を優しく抱きしめた。愛美は、ソレを受け入れて目を閉じる。
 貴方の温もりだけを、感じていたくて……。
 最高の聖夜に、二人はお互いの存在をしっかりと確かめ合っていた。



イラストレーター名:誘