●『これもまた一つの愛の形?』
12月24日。世間はクリスマスイヴで賑わっている。冬の最中、今日も今日とて相変わらず寒い日々が続いている。 「今日も相変わらず寒いのぅ」 佐神はクリスマスイヴの活気を他人事として感じながら、いつもの様に布団に篭りながら降りしきる雪を室内から眺めていた。すると、ふいに……。
ごそり……。
突如何かが布団の中に入り込んできた。……暖かくも柔らかい何かが。何かと思って見てみると布団の中から白い人影が飛び出してきた。 「メリークリスマス、佐神たん♪」 それはリリーだった。佐神は突然の侵入者に驚くが、首から下を見てもう一度驚いた。リリーが一糸纏わぬ姿であったからだ。 「ち、ちょ!? リリー何故にはだ、か……」 顔を赤くしながら驚きの言葉を発しようとしたが佐神だったが、リリーに抱きつかれると動転して言葉が出てこない。 「いいじゃん、クリスマスだし。この方が暖かいよ」 抱きついたまま上目使いで佐神を見つめるリリー。灰色の瞳に見つめられ佐神の思考が止まる。そして佐神は抑えていた理性の糸が切れる音を聞いた……。
数時間が過ぎてのち、二人はやはり布団の中にいた。 「ああ、言い忘れていた」 互いの温もりを感じながらまどろんでいた佐神が思い出したように言う。 「ん……?」 リリーは布団と佐神の体温に温められながら、ぼんやりと返事をする。 「メリークリスマス、リリー」 にっこりと微笑むながら佐神が声をかける。すると、すでに意識があるのかどうかも分からない様子リリーから返事が返ってくる。 「ん、メリクリ〜……」 言い終えるとリリーはそのまま安らかな寝息を立て始めた。外はとうに日が暮れて町にはイルミネーションが輝き、音楽が鳴っている。そして、パーティで賑わう仲間達の声も聞こえてくる。 「まぁ、こんなクリスマスもありといえばあり……か」 外の賑やかな様子を感じながら、これはこれでいいかと部屋に響くリリーの寝息を聞きながら思う。そして、リリーの寝顔……その安心しきった表情を見ていると自然と笑みが浮かぶ。さらには意識が弛緩していき、だんだんと遠くなっていくのを感じていた。そして、二人は肩を寄せ合いすやすや、と安らかな寝息を立てていたのであった。
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