●『Surprise Present』
今日はクリスマス。双翼と佳奈芽は双翼の部屋で二人でのんびり過ごす事にした。部屋に入るなり、佳奈芽が満面の笑みを浮かべて告げる。 「双翼さんにクリスマスプレゼントがあるんです」 そう言ってその下に着ていたのは明らかにサイズの合わないだぶだぶの手編みのセーター。 「待っていてください。今渡しますから」 ああ、それ俺用なのか……と思いながらただぼーっと見ていると、佳奈芽はおもむろにそのセーターの端に手をかけて、脱ごうとした。 「……って、おい!」 ちゃんと下に服を着てるとわかっていても、自分の部屋で、恋人がいきなり服を脱ぐというのは男としては色々と、非常に気恥ずかしいシチュエーションである。 ……いや、まさか知っていて反応を楽しんでいるのか? という考えがちらりと頭をよぎったが、いくらなんでも考えすぎだと思いたい。 慌てふためく双翼の気も知らず、そのままセーターを脱ぐ佳奈芽。 「はい、メリークリスマス☆」 そう言って脱いだセーターを畳んで手渡す佳奈芽は、当たり前の話だがちゃんと下に自分用のセーターを着ていた。その当たり前の事にほっと胸をなでおろす双翼。 セーターを見ると、俺と佳奈芽のセーターにはそれぞれ翼を象ったイラストが入っていて、二つで一対の翼になるようになっている。 「これは……」 「これからも一緒でいられたら……と思って」 佳奈芽は真っ赤になって、俯きながらそう言った。その思いは、双翼も同じ。頬を赤くして、微笑と一緒にこう返した。 「……ああ。これからもよろしく、な」 そう言いながらセーターに袖を通すと、彼女の温もりが残っていた。その暖かさは雪が降りしきり、身を刺すような外の寒さなど忘れさせてくれるようだった。 TVはクリスマスムード一色の街を映し出し、窓の外は街灯と雪が織り成す光の芸術品になっている。それはまるで聖夜の二人を祝福しているように、輝いている。 二人の長く暖かな夜は、これからだ――。
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