●『サンタの時間』
「ただいま〜」 クリスマスパーティから帰って来た、とものとヴァナディース。外はホワイトクリスマス。暖かくしていても、やはり身体が冷えてしまっており、二人揃って、すぐさま暖房器具が完備された和室になだれ込む。 「わ〜、やっぱりおこたはあったかいねー♪」 こたつの中へと潜り込みながら、とものがそう口にするそばで、ヴァナディースは静かにこたつへと入った。 「そうね、やっぱり寒い日はおこたが一番ね」 のんびりこたつの上にあったみかんを丁寧にむいていく。 「うーん、疲れたからちょっとだけ休もうかな……」 と、こたつへと潜り込んでいるところへ更にもぞもぞと楽な体勢を整えるとものであったが、ヴァナディースが次に彼女の顔を覗いた時には、すでにとものは夢の世界だった。ものの見事に熟睡してしまっている。 「あらあら、どうしましょう? やっぱり、とものはおこちゃまね♪」 このともの――除夜の鐘を未だリアルタイムで聞いたことのないほどのお子様。時計も夜の10時を回れば、彼女にとってそれは見知らぬ世界なのである。そして、とものがいる場所は、彼女いわくの『あくまの暖房器具』、こたつ。このような事態になるのは容易に想像もできよう。 「よっぽどクリスマスパーティが楽しかったみたいね♪」 大きな口を開けて、気持ちよさそうに寝入っているとものを眺めながら、ヴァナディースも思わず顔がゆるむ。 「ふふっ、かわいいともの♪」 「うにゃ……おこたは私を魅了してやまな……すぴ〜〜〜」 こたつの夢を見ているのか、そんな寝言をとものはつぶやく。 「う〜ん、でも、コタツにこのまま寝ちゃうのは、身体に悪いんだけどなぁ……起こそうかしら?」 とものの身体を心配し、あれこれと悩むヴァナディース。 「でも、気持ちよさそうに寝ているから、起こすのもかわいそうだけど……、でも、そういう時に起こすのも結構好きだったり♪」 とものの寝顔をじっくり堪能しつつ、ヴァナディースはむいたみかんの実を口の中に放り込む。みかんの味も堪能しつつ、ヴァナディースはふと思い立ったようにこたつを出ると、ふすまを開けて別の部屋へと出て行った。じきに戻ってきた彼女の手にあったのは、大きなライオンのぬいぐるみだった。袋に入れられて、大きな青いリボンで飾りつけられている。 「寝ている隙に、プレゼント置いておこう♪」 嬉しそうにヴァナディースはとものの枕元に、彼女への贈り物を置いた。 ヴァナディースの今日の残る楽しみは、とものの寝顔と、とものへのプレゼントへの彼女の反応だ。 (「ともの、喜んでくれるといいな……」) ヴァナディースはどきどきしながら、とものをそっと揺すり起こすのだった。
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