●『クリスマスプレゼントは……。』
今日は大切なクリスマス。 恋人たちのイベントでもあるこの日に、ルローナは彼・錬のための、とっておきのプレゼントを考えていた。 このプレゼントを考えることや、この大切な日になにを着ていこうとか、どんな風にプレゼントのことを切り出そうとか、色々と煩悶していたら、待ち合わせの時間を少し過ぎてしまった。 長い藍色の髪を揺らして、待ち合わせ場所である広場へ駆け込む。 きらきらしいイルミネーション。中央には、美しく装飾された、大きなクリスマスツリー。 その傍に立つ、暖かい装飾の光に銀色の髪を染めた錬が、すぐにルローナに気付いて手を振った。 「ごめんなさいです、考え事をしてたら遅れました!」 慌てて彼の隣に駆け寄ると、錬は「気にすんなよ、全然待ってないし」と笑顔で言ってくれた。錬の気遣いに、ルローナは走った所為ばかりではない熱さが頬に昇るのを感じる。 「考え事って、どうかした?」 「あっ、い、いえ……その……プレゼントの、こと、とか」 結局考えてもいい切り出し方が浮かばなくて、ぽろりとルローナは言ってしまった。 錬は少しだけ目を丸くして、それから照れ臭そうに青い目を細めて「そっかそっか」と言う。 「じゃあ、俺からは、これ」 彼が取り出したのは、長い長いマフラー。錬はそれをふたりにふわりと巻きつける。ふたりの距離がぐっと縮まって、身体だけではなく心まで温かくなるような、そんなプレゼントだった。 至近距離で笑う錬の頬にも、朱が差している。 「あったかい……嬉しい……」 「そう? 良かった」 彼の笑顔に、どきどきする。 ルローナは錬のジャケットを、きゅ、と握った。 「私からもプレゼントがあるから、目を閉じてくれるかな」 「え? 何かな?」 少しだけ錬が嬉しそうな期待に瞳を輝かせたあと、ルローナの言葉に従って瞼を伏せる。 どきどきする。 喜んでくれるかな。 この気持ちが伝わるかな。 とても悩んで悩んで、考えに考えた、このプレゼント。 ルローナは少しだけ背伸びして、自らの瞼も、そっと閉じた。 ──柔らかな口付け。 ほんの少しの時間を挟んで、錬がぱっと目を開く。ルローナが赤い顔で照れ笑いすると、錬はルローナの身体をぎゅっと抱き寄せて、嬉しそうに笑ってくれた。 伝わっていればいい。ううん、伝わっていると、信じている。
『ありがとう……だいすき』
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