●『聖夜に悪戯…されました』
キラキラ輝くクリスマス。 その空気を一緒に楽しみたくて、温かいコートを着込んで、マフラーを巻いて、水葉はソフィーを街へと連れ出した。イルミネーションに彩られ、眩しいほどに輝くクリスマスツリー。寒さなんて吹き飛ばす勢いで、街は活気に満ち溢れていた。 特に、この時期はラブラブモード全開なカップルも多い。なんだか、街も、人も、浮足立ってふわふわしているみたい。 「うーん、街に出たのはいいけどこの空気は……!」 友達同士で歩くのはなんだか肩身が狭いような気がして、水葉は思わず呟く。 「やっぱり、この時期は賑やかだね」 それとは逆に、そんな空気を気にした感じも無く、街並みを楽しんでいるソフィー。 自分たちだって、十分ラブラブなのに! と、思う水葉。いや、恋人とかじゃなく大切なお友達として、だけれども。だから、クリスマスのラブラブムードも気にならない無防備な顔をしているソフィーを見ると、思わず悪戯心がうずいてしまう。 「ん、どうしたの? 水ちゃん……ってな、何してるの!?」 気配を感じたソフィーが水葉の方へ視線を向けると……、 「ソフィっち、あたし達もちゅー、しちゃう?」 キス顔で迫る水葉の姿があった。 「や、ちょ、だめだってば……!!」 慌てふためいて、頬を真っ赤に染めて、手をぶんぶんと振るソフィー。もちろん、本気で唇を奪おうなんて気は、水葉にはないのだけれど。 「あはは、冗談だよっ。可愛いなー、もう!」 思わずソフィーの真っ赤な頬に、ちゅ、と軽くキスをした。 ソフィーは驚いて、ぱちくりと瞳を瞬く。 その青い瞳に、冗談めかして笑う水葉の顔が映る。 「もう……水ちゃんったら」 驚きが、ちょっぴり暖かな気持ちに変わっていく。来年も、再来年も、これから先ずっと、こんなふうに二人仲良く歩いていられたら、いい。 「来年も、いっぱい仲良くしようね」 楽しい出来事は、きっと素敵な思い出に変わる。 もっともっとたくさんの思い出を増やそうと、約束を交わす二人なのだった。
| |