●『Christmas Wedding 〜聖夜の誓い〜』
「イブの呼び出しはいいとして、何でこんな場所なのよ?」 「悪いな、こんなとこに呼び出して。とりあえず、そこの小屋に服と着替えを手伝ってくれる人がいるから着替えてきなよ」 郊外の平地に立つフォークスの前に、突然呼び出されたセレアがやってきた。 一見なにも無さそうな場所だ。理由を聞かされていなければ当然の反応だろう。 疑問と少しばかりの怒りが混じった様子で訊いてくるセレアに、フォークスは背後にある小屋の一つを指す。 「……ちゃんと後で説明しなさいよね?」 いよいよ不審に思うセレアだったが、フォークスが説明しようとしないのでしぶしぶ指示された小屋へ向かう。 セレアを見送った後、フォークスも自分の着替えを済ませるために用意した小屋へ入る。 (「さて、と。これで準備は整ったな」) 「えっと……これって……」 一足先に着替え終えたフォークスが幕のかかった大きな建築物を背にして待っていると、驚きを顔に浮かべたセレアが現れる。 彼女の動揺ももっともだろう。なにせ、セレアが今身に着けているのは特注のウェディングドレスなのだ。 雪を吹き散らす一陣の風が、セレアの白いヴェールをはためかせる。 恋人の姿に見とれていたフォークスは、最後の仕上げと建物を覆い隠していた幕をはがす。 「これ――?」 「流石に中までは出来なかったけどな……。クリスマスにこんな結婚式ってのはどうかなと思ってさ」 氷で作られた教会に驚き戸惑うセレアの前に立ったフォークスは、彼女の手を取り結婚指輪をそっとはめる。 二人の瞳がゆっくりと絡み合い、どちらからともなく近づいた唇がそっと重なる。 「俺はまだまだ未熟だが、たとえ命を懸けた戦いであっても――セレア、お前を愛し、守り通す事をここに誓う」 「…………」 突然の告白を受けたセレアは、顔を真っ赤に染めたまま俯いてしまう。 照れと嬉しさで言葉が出ないセレアの体を、そっと抱き寄せる。 おずおずと体を預けてくるセレア。その細く柔らかなぬくもりを感じながらフォークスは、彼女を幸せにすることを改めて聖夜に誓うのだった。
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