遊馬崎・祭 & 宗像・与一

●『ふたりでいれば、あったかいね。』

 クリスマスの街は夜になってますます賑やかなイルミネーションに彩られ、輝きを増していた。そこかしこからクリスマスソングが流れてきて、街ゆく人たちの顔もみな幸せそうに輝いている。祭と与一も二人仲良く、きらめく街の中を歩いていた。
「えへへ、よいちゃんとお出かけ……嬉しいな♪」
 祭は与一の腕に抱きついて嬉しそうにニコニコ微笑んだ。銀色の瞳が三日月のように細くなる。
「ねえ、折角だから二人でお互いにプレゼント買おうよ!」
 祭はそう言うと、飾りつけられたもみの木の小径を抜けてショッピングモールへと駆け出した。与一が慌ててその後を追い掛ける。
「待て、祭! 一人で勝手にどこかに行くな。また迷子になるだろう?」
 人の波を縫うように走って、追いついた与一が祭の腕を捕らえる。思わず掴んだ手に力がこもった。
「いいか? 祭は、すぐに迷子になるんだから、側にいるんだぞ?」
 白い息を弾ませながら与一は言い終えると、ようやくほっと胸をなで下ろした。走ったおかげで時間を掛けてセットした与一の髪の毛がぴょこんと跳びはねた。
「えへへ……ゴメン、そうだね。よいちゃんの側にいるね」
 ショーウィンドウのガラスには、二人が寄り添うように立つ姿が映っていた。祭は、普段とちょっと違う雰囲気の与一が珍しくて、興味深げにショーウィンドウに映る与一を見つめて言った。
「今日はよいちゃん、いつもとちょっと違うね?」
「ああ、今日はダンディに黒でピシッと決めてみたんだ」
 与一はコートの襟をたぐり寄せるとマフラーを締め直して、ぴょこんとはねたまま戻らない髪の毛を撫で付けた。けれど、何度撫で付けても髪の毛は戻らないので、諦めて白い息を大きく吐き出した。
「さすがに人が大勢いるな。祭、もっとこっちに寄るといい」
 与一は祭の腕を掴んで、ぐいと引き寄せる。
「……これで迷子にならないだろう?」
「うん、こうやってれば絶対離れないね……」
 祭はぎゅうっと与一の腕にしがみついて嬉しそうに微笑んだ。そんな祭の表情を眺めて与一も思わず口元が綻ぶ。祭の温もりが与一の腕に伝わって来る。もちろん与一の温もりもきっと祭に伝わっているのだろう。祭の色白の頬に赤みが差して見えた。
「ふたりでいれば、あったかいね。来年もいっぱい、仲良しでいようね?」
 与一と目が合うと祭はそう言って、ますますにっこりと大きく微笑んだ。



イラストレーター名:ひややっこ