ユウキ・スタンッア & 風宮・渉

●『聖夜の空で、重なる想いと・・・?』

 今日は2人にとって初めての普通のデート。渉は約束の時間よりも30分も前から、待ち合わせ場所でそわそわしながらユウキを待っていた。約束の時間を少し過ぎた頃、遠くからユウキが早足で駆けてくるのを見て、渉はユウキに微笑みかけた。
「渉さん! ごめん。待ったかなぁ〜?」
 ユウキは息を整えながら渉に謝る。
「いいえ。大丈夫です。ボクが早すぎたかな? なんだかドキドキしてしまって……」
 渉は少し照れながらユウキを見る。ユウキは顔を上げて渉と目線を合わせると、
「ほんま堪忍な。何でこんな時間かかってもうたんやろ〜!」
 自分に悪態をつきながら、もう一度謝った。渉はユウキの服装がいつもより輝いていることに気づいて、
「あ、ユウキさん、とっても綺麗ですね♪」
 と、無邪気に褒める。
「ほんま? いやぁ〜おおきにや♪」
 渉に綺麗だといわれたくて、いつもは迷わない服選びで迷って遅刻してしまったが、渉が褒めてくれたことで、ユウキの申し訳ないという気持ちは吹き飛び、笑みを浮かべた。
「それじゃ、行きましょうか」
 渉はユウキが差し出した手を握って、遊園地へと歩き始めた。

 遊園地では、同じようにクリスマスにデートしているカップルでにぎわっていた。最初はまわりのカップルたちが何をしているのか気になっていたが、時間がたつにつれてお互いに相手しか見えなくなり、周りは気にせずに自然と笑顔を浮かべて端から端まで遊び倒した。
「ねぇ、ユウキさん……最後に観覧車乗りません? いまなら空いてますし……どうですか?」
 気が付けば日が暮れる時間になったころ、渉は観覧車を見上げて指差すと、ユウキの方に目線を向ける。
「……そうやねぇ、綺麗な夜景観れそうやし……いこっか」
 2人は観覧車に乗り込み、ライトアップされた遊園地や周りの景色を楽しむ。観覧車はどんどん上がって行き、そろそろ頂上に着く頃、意を決して渉はきりだした。
「ボク、怖かったんです。ユウキさんを失うことが。けど皆さんに……何よりユウキさんに教わりました。もう逃げません。失うのが怖いなら、ユウキさんを守れる位強くなります」
 渉は決意のこもった瞳でユウキを見つめる。ユウキはそんな瞳を見て、微笑み、
「偉いでぇ、頑張ったなぁ……ほな、これからもよろしゅうな」
 少し照れながら、渉の頭を何度か撫でて、渉を見つめ返した。程なく頂上に着いた観覧車の動きが、縦から横に変わる。その動きの変化を利用して、渉はすばやくユウキに近づき、その背中に左腕を回して抱きしめるようにして、
「ユウキさん、今度はボクからって告白した時にいいましたよね?」
「え、んっ!」
 ユウキが何かを言いかける前に、渉は頬が真っ赤に染まってゆくユウキの唇を奪う。間近にせまる相手の瞳を見ながら、2人の影はひとつに重なる。花火があがる音が遠くから聞こえる中、2人はまだ半分残っている観覧車の時間を、幸せで満たしながら過ごした。



イラストレーター名:都築ゆう