蓮井坂・詩織 & 涼城・紗夜

●『お星さまが見守る聖夜』

 とある山道を中程まで上ったところ、街を一望できる丘の上に建てられた日本家屋。
 周りを木々に囲まれた静かな場所に建つその家は、茅葺き屋根に囲炉裏や土間など、昔ながらの面影をそのまま残す素敵なところ。
 二人にとっての共通の友人が住むこの家に、クリスマスの日も二人で遊びに来たのだった。
 そう、目的は星を見る為である。
 こういった静かな、そして街の明かりが届かない高いところで見る星空は、本当に美しいもの。
 詩織と紗夜の二人は家の縁側に並んで座り、しっとりとしたムードの中、星空を見上げていた。
 昼間にはケーキを食べたりプレゼントを交換したりと、わいわいと騒いだ後のこと、夜は一転してとても静かなひとときを過ごす。
「きれいだね」
「うん、星が沢山見える」
 他愛の無い会話を、ぽつり、ぽつり。
 次第に話す言葉も尽きて来てしまい、しばらく無言の時が過ぎる。
 そうしてじっとしているうち、詩織は自分の右側に座る愛しい人に……触れたくてたまらなくなって。
 とても勇気が要ったけれど、鼓動がとても早くなったけれど。そっと静かに、紗夜に寄り添ってみた。
 そして紗夜も、そんな詩織にたおやかな微笑みを返し、寄り添う彼女の身体に己の身をも預けた。
 ……それから、どれ程の時間が経ったのか、分からなかった。けれどそんなことはどうでも良かった。
 二人は動くことも、言葉を交わすこともなく、ただずっと……星を眺めていた。
 きらきらと輝く満天の夜空の星と、そしてもうひとつ、きらりと輝くもの。
 詩織の耳に光る、クリップピアス。星型の飾りが控えめに揺れるそれは、紗夜からのクリスマスプレゼント。
 言葉はないけれど。
 お互い、気持ちが通じ合っている。
 とても幸せな気持ちで満たされてゆく。こうしてゆったりと、二人で同じ時間を共有できることが本当に嬉しかった。
『これからも、こんな時間がずっと続きますように』
 そう願ったのは、きっと二人とも一緒。



イラストレーター名:ちゃき