●『聖夜に甘いひと時を』
雪が降るクリスマスの夜。シャロンの部屋では、相棒のシャーマンズゴーストシャドウのジボルと二人だけのクリスマスパーティが開かれていた。 飾り気の無い和室に炬燵があるだけの殺風景な部屋ではあるが、今日はそんな部屋にも楽しげな空気が満ちている。 シャロンはサンタ、ジボルはトナカイ(とはいっても角の飾りを頭につけているだけだが)の扮装をして、二人きりのクリスマスパーティを満喫していた。さらに、炬燵の上にはケーキにフライドチキンといった定番のメニューが所狭しと並び、二人の食欲を誘う。 「メリークリスマス、ジボル♪」 「……♪」 シャロンの向けたグラスに、ジボルも自分の持ったグラスを打ち合わせると、カチンと澄んだ音が部屋に響いた。その音を聞いて嬉しそうな様子を見せながら、さっそくジボルが料理に手をつけだす。 しばらくの間、二人で楽しく食事をしていたのだが、シャロンはふとあることに気がついた。食事が始まってからジボルがケーキに手をつけていないのだ。シャロンはケーキも食べてもらいたいと思っているのだが、ジボルはフライドチキンにご執心な様子で、フライドチキンばかりを両手につかんで食べている。 どうにかジボルにケーキを食べさせようとシャロンは考えて、ケーキに手を伸ばした。 「うん! ケーキもおいしいな」 と言いながらジボルに見せつけるようにしてケーキを食べてみせる。さらにはジボルのほうにちらちらと視線を送りながら言う。 「でも、こんなにケーキばかり食べていたら太ってしまうな」 そうやって、なんとかジボルがケーキに興味を持ってくれないものかと懸命な努力を続ける。 しかしながら、ジボルはシャロンの言葉にうなずいたり、相槌を打ったりするものの、その真意には気付かずにフライドチキンを食べてづけている。 こうなったら最後の手段だと、シャロンはケーキを差し出した。 「はい、あ〜ん」 そうすることでようやくシャロンの意図に気がついたジボルは、口をあけてケーキを食べる。おいしそうにケーキを食べたジボルを見て、シャロンも笑みをこぼす。 (「ケーキを食べて貰うのに、こんなに苦労するとは思わなかったな」) やれやれと思うシャロンの前で、ジボルは更にまた一口ケーキを食べる。 (「……まあ、なんだかんだで楽しいクリスマスにはなったかな?」) そんな風に思いながら、料理を口に運ぶシャロン。 ふたりのクリスマスは、こうして更けていくのだった。
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