神代・怜里 & 蒼氷・澪

●『二人の時間』

 今日はクリスマス。多くの人が、大切な人と共に幸せな時間を過ごす日……。

 怜里と澪は、怜里の家で、クリスマスパーティーをしていた。
「それにしても、怜里って結構良い所に住んでるよね」
 澪は、部屋の中を楽しそうに見渡している。実は、澪は怜里の家に来るのはこれが初めて。だから、今日、怜里の家に来られてとても嬉しいのだ。
「ほら、ケーキ出してやったんだから、落ち着いて食え」
 言葉には出さないが、怜里はそんな澪の様子を見て、『可愛いな』とか思ってしまっていたのだった。その証拠に、怜里の表情はとても柔らかい。
「あ、ケーキ食べる前に、プレゼント交換しない? 何が貰えるか、楽しみにしてたんだよ」
 澪は、そんなことを言い出して、自分が持ってきたプレゼントの包みを怜里に差し出す。
「ありがとな。俺の方は、持ち帰る時に荷物になりそうなんだが……」
 怜里は澪からのプレゼントを受け取ると、脇に置いてあったちょっと大きめの包みをひょいっと持ち上げると、怜里に渡した。
「わあ! 開けてもいいかな?」
 怜里からの返事を待つことなく、澪はガサガサと包み紙を取っていた。そんな澪に、怜里は小さく溜息をついたものの……とても穏やかに、澪を見守っていた。
 包み紙の中から、顔を出す、アザラシの抱き枕。それを見て、澪はにこにこしていた。
「可愛いアザラシだね。ちょっと怜里に似てるかも」
「いや、俺には似てないだろ」
「じゃ、『れいり』って名付けて大切にしようかな」
 その言葉に、怜里は上手く反応できなかった。大好きな相手に、自分が贈ったものを大切にすると言われて……しかも、それに自分の名前をつけると言われて……嬉しいけど、素直にそれを伝えられない。
(「素直に言えれば、もっと距離も縮められるんだろうな……」)
 今だって、二人でいるのに微妙な距離感がある。手の届く距離にいるのに、触れられない……。
(「ま、それが俺らしいっていったら、そうなんだろうな」)
 そう、穏やかな笑顔で、とても嬉しそうにしている澪を見つめるのだった。

 他愛のない話をしながら過ごす、穏やかな時間。隣にいる大切な人の笑顔。
 そうして、二人の時間が、過ぎていく……。



イラストレーター名:椿千沙