●『イルミネーションに囲まれて・・・』
「あ、あの……私と一緒に出かけてくれませんこと? ちょっと話がありますの……」 シンシアは、桂斗の服を掴んで呼び止めた。 「話? それなら、ここでも……」 「今日は、クリスマスですの。せっかくですから、イルミネーションを見ながらお話をしたくて……」 「そうか、今日はクリスマスだったね。それじゃあ、行こうか」 桂斗は、シンシアの手を取る。シンシアは、その手をそっと握り返した。
上手く外には連れ出せたものの……どう話を切り出したら良いのか。 (「……いざ告白するとなると……恥ずかしいですわ……」) 手に感じる、桂斗の温もり。大事に大事に守っている、この想いを……どう伝えたら良いのだろう? 断られたら……それが原因で、嫌われたりしたら……。そう、マイナス方向に考えてしまう……。
そんなことを考えているうちに、イルミネーションで彩られたツリーの前に着いてしまった。まだ、どう切り出すか決めていないのに……。 「どうかした?」 気がつけば、桂斗の手を強く握ってしまっていたらしい。心配そうな桂斗と目が合う。 「なんでもないですわ」 そう言って、笑ってはみたものの……上手く笑えていただろうか? シンシアは、桂斗の顔を見られなくて、イルミネーションに目を向けた。 「そっか。それならいいんだけど」 桂斗も、イルミネーションに視線を移した。 「クリスマスって、イルミネーションが引き立ててる感じがするよね♪」 その、イルミネーションを見る笑顔に。シンシアの気持ちは、抑え切れなくて。 繋いだ手を、離す。そして……桂斗の背中に抱きついて。 「大好きですの……。これからも、叶わなくても」 もし、桂斗が自分のことを、ただの居候としか思っていなくても。それでも、大好き……。 桂斗は、背中に感じる温もりを……想いを、知って……ふと、目を伏せる。少し置いて、イルミネーションを見上げた。 「……帰ろうか、僕らの家に」 その後に向けられた表情は、穏やかな笑顔。
イルミネーションに囲まれて。感じる互いの温もり。 この想いは、いつか叶うのだろうか……?
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