犬童・一視 & 閂・枢

●『深く積もる夜』

 ふたりで迎える二度目のクリスマス。
 銀誓館主催のクリスマスパーティに参加して……キャンドルのほのかな明かりを見つめながら、静かな時間を過ごしてきた、少し後のこと。
 一視と枢は手を繋いで、仲良く一緒にふたりの家に戻ってきた。
 他には誰もいなくて、本当にふたりだけの静かな部屋。家具も調度品も……何もない広い洋間に、硝子のベルをふたつ置いて腰を落ち着けた。
「……少し寒いかな」
 この季節で、この時間。寒いのは当たり前だけど。
 それでも暖房を入れるのではなくて……一視が用意したのは大きな一枚の毛布。
「……うん」
 一視が先に毛布にくるまって『どうぞ』と腕を広げれば、枢は少しはにかんだ顔を見せたけど、そのまま一視の胸元に身を寄せ、おとなしく彼の腕に抱かれた。

 帰って来てから、一体どれくらいの時間が経ったのだろう。
 大きな窓から外を見れば、しんしんと雪が降り積もっていて。
 青く白い月の明かりを雪が反射して、外はとても明るく見えた。
 帰って来たばかりのときは少し冷たかったお互いの体温も、こうしている間にとても温かくなっていて。
「……ん」
 枢は時折、猫のように一視の頬に身を擦り寄せて。
 一視はそんな枢の身体を、きつすぎないよう……そして優しすぎないよう。大切に大切に抱きしめて。
 きゅっと抱き寄せれば鼓動が互いに伝わり、それに気付けば余計にどきどきという音が目立ってしまって。顔を見合わせてはぽっと頬を染めて、照れ隠しのようにぎゅっと抱きつく。
 そんなことの繰り返しだけど。そんなことがとても素敵だった。
 ただただ、じっとふたりで外を見つめて。ただただ、お互いの身体の熱を感じて。
 ただただ、高鳴る胸の鼓動を聞いて。ただただ静かに。ふたりだけの時間を過ごす。

 美しい月明かり、他に何の音もしない広い部屋。
 言葉なんていらない。お互いがそこにいると感じる幸せ。
 とても静かなふたりだけの夜は、ただゆっくりと、更けてゆく。



イラストレーター名:一二戻