●『【Weihnachten】』
今日はクリスマス。 真っ白な雪が舞い降りてくる空の下、煌びやかに飾られた街でウルリッヒとディートリヒは並んで歩いていた。 「イルミネーションや店の装飾が綺麗だね」 「あぁ、そうだな。クリスマス一色って感じだ」 話しかけながらディートリヒの方を見たウルリッヒは、弟が手を合わせて息を吹きかけているのに気付く。こんなに雪が降る日だから息は白くて、それに彼の手も少しだけ赤くなっていてとても寒そうだった。 「しょうがないなぁ、ディートは。風邪でもひいたらどうするんだい」 緩く笑みを浮かべて自分の付けていた手袋を片方外し、そっと弟に手渡した。ディートリヒはまだ兄のぬくもりの残るそれを受け取る。 「なぁ、ウル」 ディートリヒがが兄を呼んだ。振り返るウルリッヒの手袋のない手を、自分の手袋のない手でさっと繋ぎ、二カッと笑う。 「これなら、両方とも寒くねぇだろ?」 「随分とベタなやつだね、ディート」 呆れたように言い返したウルリッヒもディートリヒにつられたように嬉しそうに笑って、繋いだ手を握り返した。
「今年ももう終わりか」 「御祖父様はどうしているだろうね」 手を繋いで歩きながら言葉を交わす。それはいつも一緒にいる二人だから出来る、気の置けないいつもどおりの会話だった。 ふとディートリヒが口を開く。 「なんだかクリスマスパーティの賑やかで楽しいのも良いけれどさ」 「こうやって双子で一緒に歩くような素っ気無いのも偶には良いな」 遮るように受け取って、ウルリッヒが言った。 「そのとおり」 顔を見合わせて笑う。言おうとした台詞が同じだなんて、こんなところまで通じ合っていることが、なんだか嬉しくなってしまう。 ウルリッヒとディートリヒ、二人の片方ずつの手を包む手袋と、しっかり繋いだ手の温もり。なんてったって、大好きな双子の兄弟と一緒にいるんだから、それだけで心が暖かい。 心地よさに包まれて言葉を交わしながら、彼等のクリスマスの夜は更けていった……。
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