●『光綵』
夜空に輝く星と、まばゆいイルミネーション。 綺麗にライトアップされた街中で、和彦は恋人の手料理に胸をときめかせていた。思わず鼻歌でクリスマスソングを歌ってしまうくらい、幸せ色のオーラに包まれている。 そして彼の隣では恋人の千羽耶が、しっかりと手をつないで寄り添うように歩いていた。 (「皆……幸せそうだ」) 街を行き交う恋人達を眺めながら、千羽耶はふと思う。 (「私たちも同じ様に見えているのだろうか……見えていると良いな」) 口許に笑みを浮かべ、チラリと和彦の顔を見る千羽耶。和彦はそれに気付き、柔らかく微笑み返し、見つめ合う……。 どう見ても幸せそうなカップルだ。
やがて二人は、大きなツリーの前を通りがかった。 ――思わず立ち止まる千羽耶。 (「……綺麗だ……」) 様々な電飾がなされた、一際目を惹く大きなツリーだ。 それを見ていると、今更ながらに聖夜を好きな人と過ごせる事が嬉しくなってしまう。 無意識に、千羽耶は繋いでいた彼の手を強く握り締めていた。 「ん?」 不思議に思った和彦は千羽耶の顔を見る。視線を追うとその先には、星のような光がきらめく美しいツリー。 「綺麗だね……」 和彦が呟いて再び千羽耶を見ると、彼女はとても幸せそうに笑っていた。ツリーよりも彼女の方に見惚れてしまう。 そして千羽耶の桜色の唇が、はっきりと言葉を紡いだ。 「好きだよ、和彦。――とてもとても、大好きだ」 普段表情が変わり難い千羽耶の、愛しい人にだけ向ける笑顔はとても輝いていて。嬉しくて、和彦も満面の笑みを浮かべる。 「俺も千羽耶が好きだよ。誰より、何より……全力で大好きだ!」 その言葉と共に、二人の頬がほんのりと赤く染まった。
……ツリーの下、和彦は贈り物の指輪を小さな箱から取り出した。 この指輪に込めた思いは、『彼女の隣に居て護り続ける』という誓い。 和彦は千羽耶の白い手をとり、繊細な指にそっとはめて。 「ずっと一緒にいるから……」 と、囁くように告げる。 「私もだ……」 そして微笑みと共に、千羽耶からも和彦に指輪が贈られた。
願うのはただ、来年も、其の先も、貴方と共に歩める未来――。
光の下、しめやかに行われた誓いの指輪交換……それはまるで結婚式のようで、千羽耶は触れた指先がさらに熱くなったように感じた。
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