●『2人きりのクリスマス〜聖夜の約束〜』
狭霧とグローリアは、付き合い始めて一年目のカップルだ。若いふたりのお付き合いには、まだまだ初々しさが残る。 先程別のクリスマスパーティに参加して、そこで狭霧から指輪が贈られたばかり。ラピスラズリのシルバーリング、貴女だけを愛するという約束。 今はパーティ会場を抜け出して、今度は狭霧の部屋で、ふたりっきりの小さなパーティ。 お食事をしながら『おいしいね』とか他愛ない話で盛り上がった後は、ゆったりまったりモード。 でも狭霧の方は、クリスマス前夜にちょっとだけ緊張してしまったあまり睡眠不足で、さらにおなかいっぱいの為眠気に耐え切れず。グローリアの膝枕でうとうとし始めた。 「あっと……ねちゃったかな……?」 小さな寝息だけ聞こえてくる、狭霧の頭をそっと撫でながら。 「いつもありがとね……」 にっこり微笑んでふわふわの髪の感触を楽しむ。 (「約束どおり今年も一緒できて……ホントに良かった……。戦争とか……色々あるしね……」) それまで狭霧の様子を見ていたのだけれど、ふっと上を見上げて呟く。 「また……来年も一緒に居ような?」 そしてどうやら狭霧はまだ完全に寝入っていた訳ではなかったようで、半分夢うつつでグローリアのつぶやきを聞いていた彼は、目を閉じたまま彼女に応える。 「……約束、するよ……何度でも……」 グローリアも声に気付いて視線を落とし、じっと狭霧の言葉に耳を傾ける。 「来年も……再来年も、ずっと一緒に……いられるように……」 グローリアの膝の上はとても気持ち良くて、少しずつ語尾が明確でなくなってくる。 けれど、眠る前に言っておきたい、これだけは、言わなくては。 「ボクが……守る、から……」 「狭霧……」 小さな声だったけれど、それははっきりとグローリアの耳に届いた。 幸せいっぱいの笑顔で静かに狭霧の頭を撫でるグローリアの左手の薬指には、シルバーリングが輝いて。 ほどなく狭霧は深い眠りに落ちた。 そんなゆったりとした空気の中、恋人達のクリスマスの夜は過ぎて行く。
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