●『ゆきうさぎ』
今日はクリスマス。昨晩降った雪が一面を白に染め、まさに『ホワイトクリスマス』となったわけである。 カイトはミチルと共に公園の散策を楽しんでいた。昼時とあってか子供の姿はなく、公園はしんと静まり返っている。 「あっ!」 貸し切り状態の公園を歩いていると、ミチルがブランコのそばに何かを発見した。 カイトは、ぱたぱたと走る彼女の行く手に視線を向ける。 そこにあったのは、ミチルの背丈ほどある雪だるまだった。赤と青のバケツをかぶり、仲良く並んでいる。 「なあ、ミチル。たまには童心に帰って、雪だるまでもつくってみねぇ?」 カイトの誘いに、ミチルは雪だるまをポンポンと叩きながら頷いた。 「いいねっ。作ろう作ろう!」 きらきらと目を輝かせるミチルの様子に笑みをこぼしながら、カイトは両手を大きく広げる。 「すっごいでかいのな! びっくりするほど! ……それならミチルにちなんで雪兎とかどうだ?」 「巨大なうさぎ様を作るのね。気合入れなくちゃ!」 ミチルはミトンの手袋をはめながら、真剣な眼差しで、作るのに適した広さの場所を探していた。 彼女の視線は、自然と公園の中央広場に向けられる。普段子供たちがボール遊びをするくらいなのだから、巨大な雪兎を作るには充分だ。雪もたっぷりとある。 「よし! じゃあ、作るか!」 かけ声とともに、雪兎作りが始まった。 公園のあちらこちらからきれいな雪をかき集め、山にしていく。 額に汗をかきながら、夢中で雪兎を作る2人。その表情は真剣そのものだったが、心の底から楽しんでいるようであった。時折全体が見渡せる場所からバランスを見たりもしている。 「カイト君、これ耳にしよう?」 「りょーかい」 カイトは、ミチルがどこからか引きずってきた2枚の長い葉を手にすると、完成1歩手前の雪兎の上にひょいと身軽に飛び乗った。 さくりと葉を刺し込んで、ミチルの指示を仰ぐ。 「耳はもっと長いかんじ?」 「うーん。あと10cmほしいかな……」 あごに手を添えながら、特に意味もないこだわりを口にするミチル。そんな彼女の言葉も、カイトはひとつ返事で受け入れて。 耳の位置を微調整し、赤い目を付け、巨大雪兎は完成した。 「ミチル! 記念撮影しようぜ!!」 携帯電話を取り出して、カイトはにっと笑う。 「うん、いいよ!」 ミチルはこっそりと作っていた小さな雪兎を両手の平に乗せ、カイトとともに巨大雪兎の前へ並ぶと、その雪兎が携帯電話のカメラに収まる位置を確認し。 「狼とうさぎのコラボー!」 満面の笑みを浮かべるミチル。カイトはシャッターボタンを押しながら、これが冬のいい思い出となればいいと思うのだった。
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