●『Happy Merry Christmas♪』
クリスマスはあそこのツリーの前。 お互い遅れないようにしようね? そう約束して……ついに当日。 先行動派のアリスは30分も前から待ち合わせ場所、ベルやボール、リボン等々、今日という日の為に様々な装飾が施されたクリスマスツリーの前にいた。 先日に一緒に買った揃いのサンタ服を着て、手には大きなプレゼントの包みを抱きしめて。 到着してさほど時も過ぎないうちに、空からは静かに白い欠片達が舞い降り始めた。 空からおりるものたちがアリスの方を微かに染め始めた頃、彼女とよく似た服装の待ち人の姿が通りの向こうに現れる。 「アリスちゃん、待ったです?」 「ううん、全然待ってないよ♪」 申し訳なさそうに気恥ずかしげに尋ねてくるルローナに、アリスは笑顔で返事をした。 時計は待ち合わせの時間丁度を指している。
「そうだ。はい、ルローナさん」 アリスはそう言ってプレゼントを差し出した。 ルローナも気にいってもらえるかどうかと期待と不安が入り混じった様子でプレゼントを差し出す。 互いにプレゼントを渡し合い、その場で包装を解く。 「え? うさぎ……さん?」 アリスは驚きの声をあげた。 異口同音と呼ぶのに相応しい声が、ルローナの口からもこぼれる。 箱の中に入っていたのは、蒼い飾りを身に付けた……うさぎのぬいぐるみ。 自分が贈り、ルローナの手の中に収まっているプレゼントも……うさぎのぬいぐるみ。 ちなみにそちらは赤い飾りを付けている。 「うわぁー♪ かわいい♪」 アリスは受け取ったぬいぐるみを頬へ、ぎゅーっと寄せた。 可愛らしいけれど、どこか安心できるような……ふんわりと柔らかな感触が頬に伝わってくる。 考えてることは……同じなんだな。 そんな風に思えて……自然と口元が綻びそうになる。 ちょっとの驚きのあとに……微笑ましいような、温かい気持ちが……こみあげてきた。 「ありがとう……です♪」 ルローナもそう言って、ぬいぐるみを胸にぎゅーっと抱きしめる。
ふたりを見守るかのように聳えるクリスマスツリーは、訪れた夜の計らいで輝きを一層鮮やかにし、色とりどりの光で辺りを装飾する。 対であるかのように寒さは冬らしさを増し始めた。寒気は静かに、雪のように降りつもってくる。 その冷たさは確かに肌に感じられて、でも……ぎゅっと抱きしめたぬいぐるみは、とても暖かくて。 そこから伝わってくるような、胸の奥に湧いてくるような何かが……心地良くて。 自然と浮かんだ、二つの笑顔。 ツリーのイルミネーションは、その輝きを一層……明るく華やかに、照らし出した。
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