●『白馬にのった王子…サンタ様』
イルミネーションの輝く、クリスマス・イヴの遊園地。チラチラと降る雪に電飾の煌めきが映って、さらに輝きを増していた。中でも一際、華やかに彩られているのは大きなメリーゴーランド。優しいオルゴールアレンジのクリスマスソングのリズムに乗せて、くるくると回る。 「なんだか、恥ずかしいようなきがしますけど、メリークリスマスです」 大きな白馬の背でジャックへと微笑みかけたのは陽太。髪と同じピンク色に白いふわふわの縁取りのサンタドレスに身を包み、同じ色のサンタ帽子を頭に載せている。気恥ずかしそうに染めた頬もピンク色だ。 その後ろで、メリーゴーランドに少々照れくさそうにしているジャックは黒地に白いふさふさの縁取りのサンタ服を着ている。陽太の服装をしげしげと眺めてから、彼女の顔を覗き込んだ。 「今日はまたいつもと比べても格別に可愛いね」 ジャックの言葉に嬉しそうにはにかむ陽太。 「そして今日の俺どう? Do!? 白馬に乗った王子様っぽくね?」 陽太を楽しませようとふざけて見せるジャックに、陽太はこくんと頷いた。 「えへへ、確かに白馬にのった王子様でしょうか?」 「やっぱそう見える!?」 「……サンタさんですけど」 がっくりと肩を落とすジャック。 まあ、どこからどう見てもサンタ以外の何者でもない。そのくらい自分でもちゃんとわかってる。 けれど、次に付け加えられた陽太の言葉にジャックは意気を取り戻した。 「サンタさんよく似合ってますよ」 「ではサンタさんからプレゼントです、どうぞ!」 雪の結晶が描かれたオレンジ色の箱に赤のリボンが飾られた、プレゼントの箱をそっと陽太に差し出す。それまで少し恥ずかしそうにしていた陽太の顔がパッと輝いた。 陽太はちゃんと知っている、こんなふうにいつもふざけているジャックだけれど、こういうときにはちゃんと心を込めたプレゼントを、真摯に贈ってくれることを。 「あけていいですか?」 訊ねる陽太に頷くジャック。こういう瞬間は気に入ってもらえるかどうか本当に緊張する。贈り物なんて、慣れていないから。 箱の中から現れたのは、陽太の笑顔によく似た向日葵が飾られた可愛らしいヘッドドレス。 「わわ! かわいいのです!」 光に透かしてまじまじと見、それからまたジャックへ視線を戻す。 「大事にします!」 嬉しそうな陽太の笑顔に釣られて、ジャックも笑みを零した。 「んじゃま、改めてメリークリスマス。楽しい一日を有難う」 思い出の1ページが素敵な記憶で彩られていく。 「明日からも楽しい思い出を作りましょう!」 昨日も、今日も……そして、明日もそうであって欲しい。 ずっとずっと素敵な日々が続いていくようにと、二人は揃って願うのだった。
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