シルビア・ブギ & 黒依・しろ

●『ひとでが欲しかったのじゃ』

 クリスマスが間近に迫ったある日。既に待ちきれないのか、シルビアはサンタクロースをモチーフとしたクリスマスっぽい服を着ていた。
「これからクリスマスの飾り付けをするのじゃ! 手伝うかえ?」
 と、しろを誘う。しろの方も、
「おー。任せるのです! とびっきりのパーティ会場にしてあげるのですよー♪」
 と、やる気マンマンだ。
 シルビアとしろは、部屋の中に置かれた大きなもみの木のツリーを前に、飾り付けの準備を始める。いろいろな大きさのベル、白や赤のイルミネーションに真っ赤なリボン。いろんな装飾を用意して、さぁ、これから飾り付けだ。
「飾り付けでも、もしかしたら汚れるやも知れぬ。これを着てたもれ?」
 シルビアは、事前に用意した服を、……いや服ではなく、なにやらヒトデのような形をした着ぐるみをしろに勧める。
「いやいや、それはかえって動きにくくなるんじゃ!?」
 でも楽しそうですねー。と、しろは着ぐるみを着て、飾り付けを始める。
 二人でツリーの飾り付けをしていき、もうすこしで終わりというとき、シルビアが不満の声を上げた。
「あのツリーは少々物足りぬ! 故にしろ、お主飾りになれ!」
「いやいや、聞いてない! 聞いてないからー! それって美味しそうだけど。いやそうじゃなくって! いくらこの着ぐるみがヒトデだからって、ツリーのお星様とは全然違うから!」
 いきなりのシルビアの言葉に、しろは全力で拒否をする。だが、シルビアは聞く耳を持たない。
「しろは月のエアライダーだから高いところでも問題ないのじゃ!」
 と、強引にツリーの天辺にしろを飾ってしまう。さらに、ついでにとばかりにシルビアは、ネコも身軽だから高いところは平気だろうと、一緒に飾っていく。
「うむ、これでよい!」
 全部の飾り付けが終わったツリーを前にして、シルビアは満足げに笑っていた。煌びやかに飾られたツリー。その天辺にはお星様となったしろがテカテカと光っているのだった。



イラストレーター名:猫犬人間