赤札・櫟 & レイラ・フォーティー

●『醒めぬ夜』

 季節は冬。寒風のせいで外は寒い。ましてはクリスマスの夜ならば、恋人のいない人にとっては心身共に尚厳しい。だけど恋人にいる人には、体はともかく心は寒さを感じる事は無いだろう。
 櫟とレイラがいる部屋は、ふんわりとしたカーペットや明るい色の家具と壁紙があるおかげで暖かみのある寝室になっており、外の寒さとは無縁であった。そしてその寝室で話している二人の周りは恋仲とあって部屋の空気よりも熱いようにも感じる。

「クリスマスパーティー。楽しかったわ」
 レイラは櫟に向かって微笑みかける。友人達とクリスマスパーティーを楽しんで二人で部屋に戻ったのは夜。今は愛する人と二人っきりである。
「俺も楽しかったよ。レイラ」
 櫟も口元に笑みを浮かべる。何度も二人で迎えたクリスマスだが、いつも楽しい。
「気心の知れた友達とのパーティーは楽しいものね。……櫟は疲れてない?」
「俺は大丈夫だよ。レイラこそ、今日はお疲れさん。少しリラックスしないか?」
 櫟は悪戯を思い付いた顔をして、レイラの後ろに回り込んで彼女を包み込むように優しく抱き締める。触れた櫟の手には、レイラの体の暖かさと肌の柔らかさが伝わってくる。そして、抱いたままベッドに腰を下ろす。
 その行為にレイラは少しだけ驚いたけど、すぐ目元を和ませて櫟の手を握り返し、自身の身を最愛の人に預ける。レイラもまた、櫟の体温を感じていた。初めて会った時より逞しくなった櫟の体を背中に感じる。お互いの吐息が聞こえ、鼓動を肌で感じていた。
「愛してるよ。レイラ……」
 レイラの肩越しに顔を近づけた櫟は心の底から囁く。
「私もよ櫟……」
 櫟の言葉にレイラは心の底から応える。もうお互い言う必要も無い程の仲だけど、改めて……。握っていた手を絡めて、惹かれるようにいつしかゆっくりと、お互い唇を重ね熱い口付けを交わす。
 醒めない夢など無いけれど、二人のクリスマスの夜は、醒めそうにも無い程熱かった……。



イラストレーター名:由井とーる